◇智樹君の命日、懲役9年6月判決
桜井市の自宅で長男(当時5歳)を餓死させたとして保護責任者遺棄致死罪に問われた父親で無職、吉田博被告(36)の裁判員裁判。奈良地裁の橋本一裁判長は3日の判決で「智樹君を人間扱いしなかった。無関心という名の虐待だ」と厳しく批判した。元妻(27)と同じ懲役9年6月となり、裁判員の50代男性は判決後、「育児や親としての責任は夫婦で同等だ」と述べた。【高瀬浩平、岡奈津希】
判決言い渡しの際、博被告は時折りうなずきながら聴いた。元妻に精神的に支配されたとする弁護側の主張について、橋本裁判長は「元妻のストレスは被告自身の転職や借金などが原因で自業自得」と退け、「くしくも今日は智樹君の命日。冥福を祈り、今後の生活をスタートさせてください」と諭した。
裁判員を務めた男女3人が判決後に記者会見した。智樹君と同じ年ごろの子供がいる20代の主婦は「一人で育児に悩む人がいると知ってほしい。子供は夫婦で協力して育てるもので、周りの環境も大切」と指摘。50代の男性は「親や友人、同僚など周りの人がサポートしていれば事件は防げたかもしれない」と話した。
奈良地検の徳久正次席検事は「量刑だけが問題だったが、裁判員の理解が得られた」などとコメントを出した。主任弁護人の佐藤真理弁護士は「判決は不満だ。博被告は10年でも(刑務所に)行くと言っており、控訴はしないと思う」と述べた。
◇児童虐待防止へ啓発ビラを配る--近鉄桜井駅前で子育て支援組織
事件発覚から1年となった3日、桜井市のJR・近鉄桜井駅前など4カ所で、市を主体とする子育て支援組織「要保護児童対策地域協議会」(岡本和美会長)など関係団体が児童虐待防止を呼びかける街頭活動をした。
谷奥昭弘市長ら各団体の代表約40人が参加。胸に「子ども虐待防止」のシンボルマーク・オレンジリボンを付けて市民に啓発ビラを手渡し、「地域ぐるみで子育てに協力を」と呼びかけた。
谷奥市長は「あの悲惨な事件を二度と起こさぬため、市民と関係団体の協力で一層、虐待防止に取り組んで行く」と話した。同協議会事務局は、同市児童福祉課と同家庭児童相談室(0744・42・9111)。【稲田敏雄】
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