先端にカメラや電気メスが付いた内視鏡を口などから挿入し、食道や大腸、胃にできたがんを薄皮を剥ぐように切り取っていく。外科手術のように開腹したりせず、早期がんを治療できるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という医療技術の第一人者だ。
部長として率いる、NTT東日本関東病院(東京・東五反田)内視鏡部の昨年のESD治療数は500例を超える国内トップ水準。23日には韓国や中国の内視鏡医とともにアジアでのESD治療の技術普及を目指す団体を立ち上げる。
祖父母から3代続く消化器外科医の家庭に育ち、大学卒業後は臨床の第一線に立ちたいと民間病院に勤務。平成12年にそれまでの内視鏡手術が部分ごとに分けて切除する2センチ以上の大きながんも一度で切れるESDを知り、「患者の負担が軽いし、再発の可能性も低い。これだ」と思った。
ただ、ESDは10年に日本発で始まった新しい治療法。指導者もいない中、自らの手術中のビデオを擦り切れるほど見るなど独学で工夫を重ねた。「凝り性だから始めたら、うまくなりたい一心だった」と笑う。その努力が実を結び、他の医師が3時間程度かかる手術が1時間未満で終わることも珍しくない。だが、「いくら技術を向上しても一人で治療できる人数には限界がある」と痛感したことが技術普及の思いの原点となった。
経済産業省も成長戦略の柱である医療技術輸出の先行事例として注目する中、「研修方法を確立し、海を越えて技術向上に貢献できれば、より多くの人を救うことができる。挑戦です」と力を込める。(会田聡)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130923/bdy13092309360001-n1.htm