◇受注4時間で製造
「ボッ、ボッ」。ベルトコンベヤーに載せられた完成間際の石油ファンヒーターに火が付いては消えてゆく。製造メーカー「ダイニチ工業」(新潟市南区)の製造ラインでの着火試験だ。
新潟県は石油ファンヒーターの国内シェア9割と圧倒的な製造台数を誇る。中でも、ダイニチ工業は業界1位で、シェア5割を占める。
同社は1964年創業。当初は風呂釜と風呂を暖める石油バーナーの製造販売をしていた。この技術を基に72年、業務用石油ストーブを開発。80年には家庭用石油ファンヒーターにも参入した。90年代に入ると、ファンヒーター市場は十数社がひしめく市場へと成長した。
しかし、96~99年は暖冬傾向が続き市場は一変。各社は在庫過剰に陥った。同社も99年3月期に創業以来初の最終赤字を計上した。だが、ここで同社は低価格帯の商品は売れていることに目をつけ、製造単価を下げるため生産数をあえて拡大。採算が合わずに撤退した各社のシェアを獲得していった。98年に1割ほどだったシェアは、2002年に3割、07年に5割と急激に伸びた。
急成長を支えたのは、同社独自の生産方式によるところも大きい。
暖房機器は寒暖の差に売り上げが大きく左右されるだけでなく、同社製品が売り切れであれば他社製品を購入されやすい。在庫過剰にならないよう作りすぎない、不足もさせないという、さじ加減が必要になる。同社は課題を解決するため、受注や出荷状況をリアルタイムで把握し、生産部門に即座に反映させ製造量を調整する供給体制を確立した。
朝、量販店から受注を受けると在庫台数を確認し、在庫がなければ午後から製造し、その日の夕方には出荷。翌朝には量販店に届くという早業だ。在庫がなくても4時間で製品を準備することから、同社では「4時間ハイ!ドーゾ生産方式」と名付けている。営業部からの情報更新は1時間ごと。それを基に製造計画を変更する徹底ぶりだ。
ファンヒーターを扱う企業は現在4社のみ。季節商品で、冬季しか売れないという扱いの難しさも各社撤退の一因となった。同社は出荷がほとんどない春夏季は確実に売り上げが見込まれる低価格商品を製造し倉庫に保管、秋冬季に入ると受注生産メーンに移行する。集中的に大量生産するよりも、品質の保持や一時的な人件費の増加を抑えられる利点もある。
製品のラインアップ充実にも注力している。子ども部屋に置きたいなどのニーズを受け、03年には個室用のミニファンヒーターを開発。リビングダイニングなどの広い部屋の民家の増加に伴い、11年には大型ファンヒーターを発売するなど時代に沿った商品開発を進め、現在は25種類のファンヒーターを取り扱う。
ダイニチ工業の創業の地は三条市。業界2位で国内シェア4割のコロナも本社が三条市。ダイニチ工業広報室の小林真規子さんは「寒冷地ということと、ものづくりが盛んな三条の風土が石油ファンヒーター日本一につながったのでは」と話す。
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