首都圏北部4大学連合は7日、医学・工学の各分野の研究者や企業の連携をテーマに、東京都内でシンポジウムを開催した。この中で、筑波大大学院の熊田博明准教授は、企業などと共同開発している、中性子を用いた難治性がんの治療装置を紹介。将来は、全国のがん診療連携拠点病院で同治療が受けられるようになるとの考えを示した。
同連合は、茨城大、群馬大、宇都宮大、埼玉大の4大学から成る。
熊田氏は、がん細胞に集まりやすいホウ素を患者に投与した上で、患部に中性子を照射して核反応を起こし、ホウ素を取り込んでいるがん細胞だけを壊す「中性子捕捉療法」について解説した。熊田氏によると、正常な細胞の中に浸潤したがん細胞を治療する場合、エックス線などを用いた放射線療法は、周囲の正常な細胞も傷つける恐れがあり、用いることができない。しかし、この療法を用いれば、ホウ素を取り込んだがん細胞だけを壊すことが可能だという。
原子炉を用いた中性子捕捉療法は、既に肺腫瘍や悪性脳腫瘍などで臨床研究されている。しかし、原子炉を医療機関内で使うことは現実的でないため、筑波大は、加速器を用いた中性子捕捉療法の装置の実用化に向け、三菱重工業や北大、日本原子力研究開発機構などとチームを結成。2015年度内の治験開始を目指し、開発を急いでいるという。
熊田氏は、放射線療法に必要な機器の設置に掛かるコストについて、陽子線の装置で約70億円、重粒子線の装置で約150億円とされている一方、加速器を用いた装置は30億円以下に抑えることができるとの見方を示した。将来、加速器を用いた装置を設置する医療機関数については、「100施設までいくか分からないが、各都道府県に2つくらい、がん診療連携拠点病院に入れていくことができるのではないか」と述べた。
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