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<第2次性徴の発達障害>睾丸の大きさ、自己触診を 早期治療で将来の不妊防ぐ

 ◇熊本の医師、中・高校で指導

 将来の不妊の原因にもなる第2次性徴の発達障害を見逃さないようにと、男子の性徴のバロメーターとなる精巣(睾丸(こうがん))の大きさを中高生らに自分自身で確認させようというユニークな取り組みが熊本県で広まりつつある。

 「よかった。ちゃんと大きくなってる」「おれのは大丈夫かな」。熊本県立鹿本商工高の保健室で、男子生徒らが仕切りのカーテンに隠れて自分の下着の中をチェックし、声を掛け合う。そばに置かれたポスターにはこんなキャッチコピーが大書されている。

 「お~い男子諸君!! たまには、玉の大きさ気にしろよ!」

 養護の村上加代子教諭は「大切なことだが、本人以外は確認しづらい。女子生徒の目が気になるようなので、ポスターは男子トイレの壁に張って実践を促している」と話す。

 ポスターを作ったのは泌尿器科「池田クリニック」(同県合志市)の池田稔院長。「大人になってから男性不妊の疑いで受診し、そこで初めて第2次性徴の発達障害に気付く人が多い。何とか早期発見できないかと自己触診の啓発を思いついた」という。親交がある漫画家のタイム涼介さんにイラストを頼み、昨春、自費で300枚印刷した。学校での取り組みは中学・高校で年間約40回行っている性教育講演を通じて広がっている。

 精巣は左右に一つずつ楕円(だえん)形の玉があり、10歳ぐらいまでは一つの容積が平均1~2ミリリットル程度だが、3ミリリットルに達して第2次性徴が始まると、5年ほどで20ミリリットル前後にまで大きくなる。しかし、ホルモン分泌の異常などが原因で幼児期のサイズのままだったり、大きくなり始めても途中でストップしたりすることがある。

 本来はある程度の大きさになると男性ホルモンが分泌され、陰毛やひげが生えて声変わりするが、小さなままだとそうした変化が起こらない。また、精巣が十分に大きくならないと自然妊娠で子どもをもうけられるだけの精子が作られにくいことも分かっている。陰茎の勃起(ぼっき)や射精は可能でも精子が作られていないことがあるため見過ごされる恐れもある。

 池田院長が提唱する自己触診法は、親指と人さし指で輪を作り、陰のう(袋)で包まれた精巣を一つずつはめてみる方法だ。精巣が15ミリリットル前後あれば、平均的な指の長さなら指の輪を通り抜けることはない。逆にスカスカと通過する場合は第2次性徴の成長障害が起きている可能性が高い。

 精巣が小さい特徴をもつ病の一つ「クラインフェルター症候群」は、500~1000人に1人いるが未成年の段階では気付かれないことが多いといわれる。池田院長は「発達には個人差があるが、高校1年になっても指の輪を通ってしまうようならば泌尿器科や内分泌科に相談してほしい」とアドバイスする。

   ◇   ◇

 奈良県立医大の岡本新悟・臨床教授(内分泌・代謝)も約2年前から、県内の養護教諭の会合などで精巣の大きさをチェックする重要性を訴えている。今後は、精巣のサイズをひと目で確認できる簡易なモデルシートをつくり、中学卒業時に男子生徒にプレゼントする活動を提言していこうと考えている。

 学校での健康診断の実施は学校保健安全法で定められているが、第2次性徴は検査項目に入っていない。岡本臨床教授は「それでは全く子どもの成長期をチェックしていることにならない」と手厳しい。養護教諭らが「何か異常があるのでは」と気付いても、結果的に問題がなかった時に予想される親からの抗議などを考えると「項目にないことは口に出しにくい現実もあるようだ」という。

 第2次性徴の発達障害は、特に男子の場合はホルモン分泌の異常の原因として脳腫瘍が隠れていることがある。また、思春期に発見してホルモン注射などで治療すれば、将来子どもを持てる可能性が高くなり、活力や学習効率が上がることも期待できる。岡本臨床教授は「単に発見が遅れたというだけで治療のチャンスを逃した患者をたくさん見てきた。最終的には学校段階で患者を見逃さないルールやシステムの構築が必要だが、自衛策としてまずは精巣の自己触診を普及させたい」と語る。

 ◇「大きさ気にした経験ある」1割

 池田院長が一昨年、熊本県内の男性141人(23~54歳)に行ったアンケートからは、男子の第2次性徴の発達障害が見逃される理由が推察できる。

 陰茎と精巣の大きさを気にした経験があるかを尋ねた質問では、陰茎は7割が「ある」と答えたが、精巣は1割を切った。精巣の大きさを気にした時期は中学生で3割弱、高校生が6割強。気にしたことがあると答えた14人のうち1人が友達に、1人が医療機関に相談したが、残る12人は誰にも相談していなかった。

 親が異常を発見できる場所として、風呂に一緒に入っていた時期を尋ねると、小学4年までで7割強がやめ、小学6年までには9割以上が親と入浴しなくなっていた。

 池田院長は「第2次性徴が始まるころの子どもは親には下半身を見せず、精巣ではなく陰茎のサイズを気にしていることが分かった。女子の場合は母親が月経の有無に注意を払うが、男子はそうした機会がないため早期に発見されにくいのだろう」と話す。

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 ■陰茎・精巣の大きさについて

 気にしたことがある

     陰茎   精巣

ある   70.2  9.9

ない   29.8 90.1

 「ある」の場合の時期

     陰茎   精巣

小学生   3.0  0

中学生  35.4 28.6

高校生  28.3 64.3

20歳代 20.2  7.1

今も   13.1  0

 相談相手

     陰茎   精巣

なし   86.9 85.7

親兄弟   1.0  0

友だち  11.1  7.1

医療機関  1.0  7.1

 (池田クリニックの調査から。単位%)

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/bizskills/healthcare/20120124ddm013100022000c.html

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