「小児慢性疲労症候群」とは、これまで健康に生活していた子どもが、ある時原因不明の激しい全身疲労感に襲われ、集中力の低下、頭痛、腹痛、吐き気、睡眠障害、思考力の低下、学習能力の低下、記憶力の低下などが続くようになる病気です。勉強が手につかなくなったり、遊べなくなり、学校生活が困難となって不登校やひきこもりに至ります。
この病気は、「慢性疲労症候群」として、大人でもかかります。世界的にこの病的疲労の存在は認められいますが、原因がはっきりとわかっていません。対人的・物理的・化学的・生物学的な「複合ストレス」がきっかけとなって発症すると言われています。子どもの不登校について、まさか病気だとは思わずにいる親御さんは、当然ですがまだまだ多いそうです。
まじめな頑張り屋さんの子どもに多く見られると言われています。学校生活や日常生活も何かと無理をしてがんばっている子が、責任ある役割を担ったり、クラブ活動で毎日激しい練習に打ち込んだりするなどしていると、過度のプレッシャーにより誘発される傾向があります。また、持続性のある不安や緊張が、慢性疲労症候群につながるとも指摘されています。
小児慢性疲労症候群の症状としては、脳機能の疲労・機能低下による自律神経機能異常、生体リズムを整える内分泌機能のリズム障害、生活リズムを作る深部体温調節機能障害、および睡眠・覚醒リズム障害、うつ状態などが混在する状態になります。
自立神経機能異常は、呼吸、循環、消化、吸収、代謝など身体活動の基本に影響し、生体リズムの乱れは、内分泌系に異常をきたしてしまいます。
診断には、2007年にアメリカで承認された小児慢性疲労症候群の診断基準「CCFS」が使われます。
CCFSでは、強い疲労・疲労感、極端なだるさ、食欲低下、てのひらの発汗などの症状に加えて、診断の目安になる以下の5つの症状を細かい基準で確認していき、点数化して判断します。
1)労作後疲労(日常的な行動のあとの身体・精神的疲労)
2)睡眠問題
3)疼痛
4)神経認知問題
5)自律神経症状・神経内分泌症状・免疫系症状
さらに以下も確認します。
●少なくとも3か月以上、睡眠や休養によっても改善しない疲労状態が続き、日常生活が50%以上障害される。
●甲状腺機能障害や血液の病気、感染症などが、一般的な医学的検査では異常が見出せない。
結果、すべての基準を満たせば「小児慢性疲労症候群」である、との診断を行っています。
慢性疲労症候群は、まだ病理学的に定義のない疾患で、日本ではまだ特定疾患にも指定されていない難病です。子どもがかかってしまうと、健全な発育にも影響を及ぼしますし、社会人では働けないので生活苦に陥ってしまいます。
子どもが不登校を始めたら、学校生活だけができないのか、それとも日常的な社会生活全般が行えなくなっている状態なのか、子どもの様子を長く観察することが大切です。重症化してしまうと寝たきりのような状態になってしまうこともありますので、早めに病院で診察を受けましょう。現状では、症状を悪化させないための治療法がもっとも大切になります。
監修:三原武彦(小児科医)
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