「虫歯を放っておくと、死に至ることもある」という話を耳にしたことはありませんか?「そんなことがあるわけない」と思う方もいるかもしれませんが、可能性はゼロではないのです。そこで今回は、医師の監修のもと、虫歯を放っておくとどうなるのかをご紹介します。
監修
天野歯科医院 院長 天野聖志先生
米国歯科大学院卒業。単に虫歯や歯周病を治すだけでなく、将来に渡る歯の健康と美しさを視野に入れた総合的な治療を実現するため、専門医による米国式チーム歯科治療を実施している。また歯を削らない治療、神経や歯を抜かない治療にも力を入れている。
虫歯を放置するとどうなるの?
虫歯ができても、歯医者に行くのが面倒だったり、治療を受けるのが怖かったりして、そのまま放置している方もいるのではないでしょうか?でも、虫歯を放置するのは、とても危険なこと。歯が溶けてなくなってしまうだけでなく、最悪の場合には、命に関わることだってあるのです。今回は、虫歯を治療せずに放置すると、どのようになるのかご紹介していきます。
虫歯はこうやって進行する
虫歯は、細菌が糖分をエサにしてつくり出す酸によって、歯が溶かされてもろくなり、穴が開いてしまうことです。
歯の表面は「エナメル質」という体の中でもっとも硬い組織で覆われているので、初期段階の虫歯はゆっくりと進行していきます。しかし、その下にある「象牙質」はやわらかい組織なので、虫歯菌が象牙質に達すると、一見小さな穴しか空いていないように見えても、虫歯が一気に大きく広がってしまうのです。
虫歯が神経にまで到達したら
虫歯を治療せずに放置していると、虫歯菌は神経(歯髄)に到達し、痛みが起こります。それでもさらに放っておくと、虫歯菌に侵された神経はやがて死んでしまいます。本来であれば、死んでしまった神経は歯の根管治療を受けて取り除くものですが、そのままにしていると歯の中で腐敗して、細菌をばらまくようになるのです。
神経が死んでいるので、ここまで来れば虫歯の痛みはもうありませんが、虫歯の放置が怖いのは実はここからなのです。
虫歯の放置が起こす怖い症状
腐った神経からばらまかれた細菌は、あごの骨にまで広がっていきます。すると、あごの骨が炎症を起こして化膿し、歯茎から膿が出るようになります。また、あごの骨髄が細菌に感染して「骨髄炎」になり、熱や嘔吐、体調不良などが続くようになることもあるのです。
さらに、細菌が血液の中に入り込んでしまうと、全身をめぐって「肺炎」や「脳梗塞」「心筋梗塞」を引き起こしたり、心臓や脳が虫歯菌に感染して、重篤な後遺症が残ったり、死に至ることも。
虫歯は、早期に発見するほど簡単な処置や対処法で済みます。しかし、初期の虫歯は痛みやしみ、腫れなどの自覚症状がなく、気づかないうちに虫歯が進行していることも少なくありません。初期段階で虫歯を発見して適切な対処を行えるよう、定期的に歯科検診を受けるようにしましょう。