いよいよ今月今月5日から番号通知が始まったマインバー制度。これにより来年から社会保障(医療、年金、福祉分野)、税金、災害対策の場面で行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。煩雑な行政手続きが減るのは高齢者にとっても便利ですが、その管理には不安の声もあがっています。
10月6日には、早速、マイナンバー制度を悪用した高齢者への詐欺が発生したことを、消費者庁が発表しました。不審な電話を受けた70代女性が、現金を支払わされる被害に遭ったとのことです。高齢者を狙った特殊詐欺は、手口もますます巧妙になっています。安心した老後を過ごすために、私たちはどう備えればいいのでしょうか。
消費者庁によると、70代の女性は、公的な相談窓口を名乗る人物からの電話で嘘のマイナンバーを伝えられたということです。そしてその後、別の男性から「公的機関に寄付をしたいのでマイナンバーを貸してほしい」と連絡があり、教えてしまいました。
すると翌日、寄付を受けた機関を名乗る人物から連絡があり、「マイナンバーを教えたましたね、それは犯罪に当たります」と、現金支払いを要求され、女性は支払ったということです。
このように、現在は詐欺も巧妙化しています。複数人で二重三重に仕掛けてこられては、お年寄りでなくてもだまされてしまう可能性があるでしょう。
今年8月下旬には、東京都内で路上を歩いている高齢男性に腕時計や財布、バッグなどが入った紙袋を突然押しつけ、現金を払わせるという「押し売り」行為を繰り返していた男性2人組が逮捕されました。犯人は、警察の調べに対して「若者は金を持っていないし、女性は警戒する」として裕福そうな高齢男性を狙ったと供述しているとのこと。消費者庁や国民生活センターでは、多発する「高齢者を狙った」悪質商法や詐欺に対して注意を呼びかけています。
政府広報オンラインに公開されている資料によると、被害者と対面することなく、振り込みなどの方法でお金をだまし取る「特殊詐欺」の被害は年々増加しており、平成22年の被害総額が約112億円だったのに対して、平成25年では約489億円と4倍以上の数字になっています。また、「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」に代表されるこうした特殊詐欺に関しては、高齢者が狙われやすいという特徴があります。
実際、消費生活センターなどに寄せられる65歳以上の高齢者の消費生活相談は増加しているとのこと。近年は悪質商法をおこなう事業者が高齢者をターゲットにしており、「健康食品の送りつけ商法」のような電話勧誘販売の増加が顕著だということです。
被害者である高齢者は、こうした悪質商法や詐欺の被害に遭うと家族に責められてしまうこともあり、だれにも相談できず、事件が発覚しないケースもあるといいます。
最近では、怪しげな株や社債、土地の権利などの購入を持ちかける「投資型」の詐欺や、日本年金機構や消費者庁などの政府関係機関や郵便局を名乗り、個人情報を取得する手口も問題となっています。
身におぼえのない商品やパンフレット、メールや請求書などが送られてきた際には、お金を払ってしまう前に、「周囲の人や警察に相談し、助けを求めてほしい」と呼びかけています。
また、高齢者のいる家族や周囲の人は、日ごろから詐欺や悪質商法の手口を説明して本人に注意をうながしたり、手紙やパンフレットなどの郵便物に目を光らせておくことも大切といえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ) ライター
健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。
<参考>
http://www.kokusen.go.jp/info/data/in-20150901.html
(「ねらわれてます!高齢者 悪質商法110番」 国民生活センター)
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/korei_syohisya/index.html
(「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」 政府広報オンライン)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151007-00010007-mocosuku-hlth