なんだか体がつらい…頭痛や肩こりがひどい…整体や病院に行ってはみたけど治らない…。そんな原因不明の体調不良に悩んでいる方、もしかしたら「隠れ顎関節症」かもしれないですよ。
顎関節症は、実はアゴだけの病気ではなく、アゴ以外の部分にも不具合を生じさせることがあるんです。そのため、アゴの痛みに自覚症状がなかったとしても実はアゴに問題を抱えていた、という「隠れ顎関節症」の人口がとても多いんです!
そこで今回は、アゴのエキスパートである、整顎(せいがく)ドクターの藤原邦康先生に「隠れ顎関節症」についてお話を聞いてきました。
「顎関節症」の症状とは
「アゴに痛みがあるタイプ」と「アゴ以外に問題が出るタイプ」
顎関節症には、「アゴに痛みがある」「口の開け閉めがしにくい」「ろれつが回りにくい」など、実際にアゴに支障が出る症状のほかにも、「頭痛」「肩こり」など、アゴ以外の場所に不具合が出る場合もあります。そのため、アゴに問題を抱えていたとしても自覚症状のない「隠れ顎関節症」と呼ばれる人がとても多いのだそうです。
藤原先生「私は『アゴ難民』と呼んでいますが、実に8割以上の人間がアゴに問題を抱えていると考えられます」
アゴのゆがみは全身のゆがみ?
しかしながら、なぜ顎関節症の症状に「肩こり」や「頭痛」があるのでしょうか。アゴの不具合なのにアゴから離れた場所に問題が出るのは、なんだか不思議に感じられますよね。
藤原先生「足・腰・背骨・肩と身体を下から上に見てみると、アゴの骨は振り子のように下垂していることがわかります。なので、姿勢が悪かったりして下半身や背骨のバランスが崩れると、振り子が揺れるように顎関節もゆがんでしまうのです」
頭痛の原因は顎関節症かも?!
下半身や背骨がアゴとつながっているだけでなく、もちろん頭蓋骨や眼をつなぐ骨や筋肉ともアゴはつながっています。そのため、顎関節症が原因で頭痛を引き起こすことがあるだけでなく、血行が悪くなった結果頭皮が固くなってしまうこともあるのだそうです。
それらの原因がまさか「アゴ」にあるだなんて、今まで思ってもみなかったですよね。原因不明の頭痛に悩まされている方は、「隠れ顎関節症」を疑ったほうがいいかもしれません。
「顎関節症」の原因
では、いったいなぜ、多くの人がアゴに不具合を抱えているのでしょうか。
顎関節症の原因としては、「ストレス」「かみ合わせの悪さ」「食いしばり癖や肘をつくなどの日常の悪癖」があげられます。
しかし、原因はそれだけではありません。藤原先生いわく、人は、1日におよそ2000回口の開け閉めを行っているのだそうです。食事をしたり人と話したりすることもあって、体中で最も多く動かされている関節がアゴなのだとか。
しかし、1日に何千回と繰り返すアゴの開閉動作を、毎回正確にできる人はまずいないでしょう。なので、「食いしばり癖がある」「肘をつく癖がある」といった悪い習慣を持っている人はもちろんですが、たとえそういう癖がなかったとしても、誰しもが顎関節症になる可能性を秘めているということなのです。
「隠れ顎関節症」チェック
「全然自覚していなかったけど、もしかして自分もアゴに問題があるかもしれない…?」と不安になってきた方は、ぜひ以下の「隠れ顎関節症チェック」を試してみてください。
- 口を開け閉めするときに音がする
- 歯ぎしり・食いしばり癖がある
- 口を開いて、縦に指が3本入らない
- 眼の大きさが左右で違う
- 歯列矯正・インプラント・差し歯をしている(いた)
- 肩こりからくる頭痛がある
- 喫煙する
- 人前で話す・歌う仕事をしている
- スポーツ競技をしている
- 口の内側や舌を噛んでしまう
- 片側で食べ物を噛む
この中で、3つ以上当てはまった人は要注意!「隠れ顎関節症」の可能性があります。今はまだ大きな不具合が出ていなかったとしても、放っておくとどんどん悪化してしまうかもしれません。
「隠れ顎関節症」の予防法
それでは、「隠れ顎関節症」を悪化させないためにはどのようにすればいいのでしょうか。病院にかからないでも、自分の力で予防する方法を教えていただきました。
硬いものをかまない
「硬いものをかんだほうがアゴが強くなる」という言葉をよく聞きますが、硬いものを食べるとアゴに大きな負担をかけてしまいます。あまり硬すぎるものは避けるようにしましょう。
左右均等にかむ
食事の際、無意識のうちに左右どちらかに偏ってかんでいる人も多いのだそうです。常に意識するのは難しいかもしれませんが、なるべく左右均等にかむように心がけましょう。
頬杖をつかない
首が疲れるとついつい頬杖をつきたくなってしまいますが、これはゆがみの原因になります。そもそも、頬杖をつかないと疲れてしまうという人は、姿勢が悪い場合が多いです。日頃から正しい姿勢をとるように意識しましょう。
リラックスする
食いしばりや歯ぎしりの原因のひとつに「ストレス」があります。精神が緊張状態だと体もこわばってしまいますが、逆に、気がゆるんでいるときは体もリラックスした状態になります。ストレスの根本解決は難しいかもしれませんが、リラックスした姿勢を取ることで脳が錯覚し、心のストレスを軽減させる効果があります。
整顎エクササイズ
藤原先生考案の、アゴをゆるめて緊張を解く「整顎エクササイズ」もオススメです。5分程度でお手軽にできるので、疲れを感じたときにはぜひこちらを試してみてください。
顎関節症の治療法
「隠れ顎関節症」であれば、整顎エクササイズや日々の心がけなど、自力で対処することができます。しかし、気づかぬ間に症状が悪化している場合には、どうすればいいのでしょうか。
藤原先生「そもそも、アゴの痛みに自覚症状があったとしても、何科を受診すればいいかよくわからないですよね。とりあえず歯医者に行ってみたけれど治らなかった、という人も多いです。色々な病院に行っても症状が改善されなかった患者さんが私のところにきて、実は顎が原因だった、とわかるケースもあります」
確かに、かみ合わせが悪かったり歯ぎしりでアゴが痛い場合は、多くの人が歯医者を受診するのではないでしょうか。しかし、歯医者は字の通り「歯」の専門医であって、「アゴ」についてはそこまで詳しくない先生も多いのだそうです。
そのため、アゴや全身の歪みを取る前に歯を削ってしまって、それによって余計に噛み合わせが悪くなってしまったり、顎関節症を悪化させてしまう場合も多いのだといいます。また、マウスピース治療も、関節が歪んだ状態で歯型を取るので、根本解決にはならないのだそうです。
カイロプラクティックでの治療法
藤原先生のようなカイロプラクティックでの治療では、最初は足や腰など、下半身のゆがみを取ることから始め、改善されたら徐々に上半身へ、そして最後にアゴのゆがみを取るのだそうです。しかし、ゆがみを取るといっても、いわゆる整体のようにグイグイ押したりするのではなく、筋肉に優しく触れるような施術なのだといいます。
しかし、顎関節症には色々なタイプがあるので、カイロ治療だけで治らない場合は歯科医院と連携して治療を行うそうです。
藤原先生「ドアの開け閉めに不具合が生じたとき、扉の立て付けを直すのが歯医者さんの役割です。しかし、ちょうつがいのネジをしめたり、ドア枠を調整したり、場合によってはドアを削ったりしても改善されない場合は、もしかしたら家の大黒柱が傾いているかもしれないし、土台がゆがんでいるのかもしれない。その大黒柱や土台の部分を直すのがカイロの役目ということです」
アゴを大事にしましょう
恐るべきことに、「アゴの乱れは全身の乱れ」だということが発覚してしまいました。「たかがアゴ」と高をくくっていては、後々大変なことになってしまうかもしれません。今一度ご自身のアゴと向かい合い、アゴに優しい生活を送るよう心がけてください。