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パキスタンで熱波による死者700人! 日本人も知っておくべき高温障害対策

パキスタンを猛烈な熱波が襲っています。通信社の情報によれば、南部のカラチでは最高気温が摂氏45度を超えた20日以降、体調不良を訴える人が続出。その後も40度以上の気温が続き、24日時点で熱中症などにより700人以上の死者が出る事態となりました。また、入院患者数は5,000名とも伝えられており、犠牲者がさらに増えることが予想されます。日本でも今年は早くから真夏日(30度以上)が観測されるなど、真夏にかけての暑さが懸念されるところです。ここでは、高い気温がもたらす健康被害について解説します。

◆南アジアを次々と襲う熱波

今年5月には、インドも記録的な熱波による被害が出たことは記憶に新しいところです。特に被害が大きかった南部地域では摂氏50度近い気温が観測され、5月30日にはインド全域で死者が2000人を超える最悪の事態となりました。高気温が続くようなら、パキスタンでの被害もさらに拡大すると考えられます。近年、日本でも熱中症の被害が相次いでいることからもわかるように、暑さへの対処を誤ると死を招きます。これから夏本番を迎える日本でも、十分な警戒が必要と言えるでしょう。

◆高温多湿の環境がもたらす高温障害

近年の日本では、摂氏35度以上の「真夏日」が続くことも珍しくありません。こうした高温多湿の環境に長時間さらされることは、精神的・肉体的に有害です。体温が上昇すると、「高温障害」(熱中症)という症状を起こします。高温障害は、体温の上昇を伴わない熱けいれん・熱疲労(熱虚脱)と、体温が上昇する熱射病(日射病)に大別されます。なお、熱射病のように外的環境要因による高体温を「うつ熱」と呼びます。

◆人間の体温調節機能

平常時の体温である「平熱」は人種などによって異なりますが、日本人の平熱は36.8度前後と言われています。通常、外気温の変化にかかわらず体温変化はほぼ1度以内に収まります。これは、私たちの身体が備える恒常性という機能によるもので、人間はエネルギーの75%以上を体温維持に使っているとも言われます。

例えば、外に出て寒いと感じたとすると、その情報は神経を通って脳の視床下部に伝えられます。すると視床下部からは全身に命令が出され、皮膚の血管が細くなって皮膚から逃げる熱を減らします。逆に暑いときは、汗をかいて熱を逃し、体温を下げます。視床下部は自律神経の中枢であり、体温調節反応の司令塔なのです。

◆30度以下でもある熱中症のリスク

高温障害(熱中症)は、より低い気温でも湿度が高ければ起こり得ます。また、乳幼児、高齢者、高血圧や糖尿病、心疾患、貧血、甲状腺疾患などがある人も、熱中症が発生しやすくなります。具体的には、気温が25度以上/湿度60%以上の状態で起こりやすくなると言われています。

【熱虚脱・熱けいれんの症状】
頭重感、頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感などから始まり、進むと脳の血流減少により、めまいや耳鳴り、血圧の低下による顔面蒼白、発汗などが現れます。さらに、意識が喪失することもありますが、体温の上昇は見られません。また、脱水時に塩分を補給せず水分のみを補給すると、身体中の筋肉の痛みやけいれんが起こることがあります。

【熱射病の症状】
熱の放散がうまくいかず、体内の蓄熱量が増加して体温が上昇します。この状態を「熱疲労」と呼びます。これを放置すると体温はさらに上昇し、体温調節中枢の破たんをきたし、熱射病に移行します。熱射病になると、体温が41度以上になり、危険な状態になります。進行すると、皮膚の乾燥・紅潮やけいれんや意識障害、乏尿・無尿など見られます。

◆万が一高温障害になったら?

軽度の熱虚脱や熱けいれんでは、涼しい場所で安静をとり、スポーツドリンクや食塩水(水500mlに5gの食塩)を飲用します。内科を受診して、治療を受けてください。適切に処置すれば問題なく回復するでしょう。一方、熱射病(日射病)で体温が下がらない状態が続くと入院治療が必要です。輸液療法を行って迅速に体温を降下させます。意識障害を起こしている患者は、特に昏睡が4時間以上続いて回復しない場合や多臓器不全などを合併しているケースでは死亡することもあります。重症の場合は回復しても後遺症が残ることがあります。

◆栄養と水分の補給を大切に

今回のパキスタンの場合は、イスラム教のラマダン(断食)の時期が熱波と重なったことが事態の悪化を招いています。ラマダンの間、人々は日の出から日没までの間、基本的に食べ物はおろか水分も摂りません。今年のラマダンは日中の時間が長いことも加わって、人々が低栄養かつ水分不足気味の状態、つまり高温障害になりやすい状態だったと言えます。

日本にはラマダンのような儀式はあまりありませんが、暑さで食欲不振になりがちという人は多いでしょう。しかし、日頃から栄養や水分を適切に摂取することが、高温障害対策の基本であることを覚えておいてください。

監修:岡本良平(医師、東京医科歯科大学名誉教授)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150624-00000003-mocosuku-hlth

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