自動車と違って免許のいらない自転車は、子どもにとって重要な移動手段。だが、もし事故を起こしてしまえば、大人と同等の責任が生じてしまう。とはいえ、高額な賠償金を請求された場合、子どもには支払い能力がないため、親が賠償するケースが多い。実際に、11歳男児の母親が監督責任を問われ、高額な賠償金の支払いを課せられた事例があるので紹介しよう。
多発する「自転車事故」に対策強化! 県や自治体の取り組み一覧
<事故内容>
2008年9月22日夜、兵庫県神戸市の急な下り坂付近を26インチのマウンテンバイクに乗った男児(11歳)が、時速20~30キロで疾走。友人が歩行者(62歳)に気づき、「危ない!」と叫んだが、ブレーキを掛ける間もなく正面衝突した。歩行者は約2メートル跳ね飛ばされ、頭を強く打って意識不明の重体、植物状態となった。
<判決>
歩行者の夫と夫が加入する保険会社が、男児の母親に対し賠償金約4600万円の支払い及び支払った保険金6000万円の返還を求めて訴えを起こした。裁判では、男児の前方不注視や速度の出しすぎなどが事故原因と認定。責任能力がない男児の唯一の親権者である母親は、「自転車に乗るときは日頃から注意するよう指導していた」と主張したが、裁判所は「監督義務を十分に果たしていなかった」として、合計約9500万円の支払いを命じた(2013年7月4日神戸地裁判決)。
判決を見ると、たとえ事故を起こしたのが子どもであっても、「子どもだから」「未成年だから」というのは斟酌(しんしゃく)理由にならないことがよくわかる。今年になって初めて、親の賠償責任を免責とする内容の判決も出てきているが、万が一に備えることは非常に重要。子どもにしっかり注意を促したり、自転車向け保険へ加入するなど、事故対策はしっかりとっておこう。ちなみに、事故が起きた兵庫県は、全国で初めて自転車保険の加入義務化を実施している。
監修/新橋IT法律事務所 弁護士・谷川徹三氏
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