重症化しやすいといわれている“大人のアトピー”。大人になってからアトピーを発症し、悩まれている方も少なくないですよね。
もともとは子どものときに発症しやすく、年齢とともに治るとされていたアトピー性皮膚炎ですが、大人になっても治らなかったり、大人になってから発症したりするのは、何か理由があるのでしょうか?
そこで今回は、川島眞先生の著書『皮膚に聴く からだとこころ』を参考に、大人のアトピーについて考えていきたいと思います。
■昔は“大人のアトピー”はなかった
同著によれば、川島先生が医師になった昭和50年代は、アトピー性皮膚炎は“子どもに多い普通の湿疹”という認識であり、「中学生くらいには治ります」というように伝えていたとのこと。また、その当時は、成人の方にアトピー性皮膚炎と診断すること自体、ほとんどなかったといいます。
<皮膚の成長とともに、精神面での成長も相まって、搔くという行為を抑えられるようになり、アトピーもよくなっていたのです。>
本来であれば、大人になるにつれ、抑えられる“搔く”という行為。掻くのを抑えられず、大人になってもアトピーが治らない何かしらの背景があるということでしょうか。
■搔くという行為は“心の問題”の代償行為?
筆者も20代半ばに、背中や腕の一部分に皮膚炎ができ、皮膚科に通院していたことがあります。先生からは「搔くという行為を通してストレスを発散している可能性があるので、上手にストレスを発散をしてください」などと言われたことがありました。
同著でも、川島先生が患者さんに、かゆみ以外の搔く理由を質問したところ、次のような回答があったそうです。
<(略)「イライラすると搔く」「触っていると落ち着く」「搔いていると気が紛れる」「搔くとすっきりしてやめられない」「ストレス解消」と、やはり、かゆいから搔いているわけではなかったのです。>
重症の成人のアトピー性皮膚炎の大半はこうした理由であり、“心の問題”の代償行為として、“搔く”という行為が存在しているとか。
たしかに、搔いている間は気持ちいいのですが、搔くとますます症状が悪化し、悪いスパイラルに入ってしまうんですよね……。
■大人のアトピー患者の9割は“心の問題”を抱えていた!?
かゆいから搔くのではなく、搔きたいから搔くという、この行為を“嗜癖的掻破行動”と呼ぶとのこと。
<(略)この嗜癖的掻破行動を行っていたアトピー性皮膚炎患者87例を精神科医に診てもらったところ、なんと「診断なし」と判断されたのは1割のみで、残りの9割はなんらかの精神的な問題を抱えていることが判明しました。>
アトピーの増悪に関与していた問題は、家庭内の問題や、職業上の問題、教育上の問題などであることもわかったそうです。
これらの問題を今すぐ取り除くのは難しいこともあると思いますので、ストレスを溜めすぎず、誰かに話を聴いてもらうなどして、ストレスを発散していきたいですね。
以上、大人のアトピーについてお伝えしましたが、いかがでしたか? ストレスが大人のアトピーに大きな影響を及ぼしているということに、意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「ストレスも1つの原因かもしれない」と捉え、もし思い当たる節があるという場合には、“ストレスに感じているもの”と上手に付き合っていきたいですね。
http://wooris.jp/archives/132161