今回の県議選では初めて選挙公報が点訳され、視覚障害者らの元や各市町村選管、福祉事務所などに届けられた。これまでは候補者の訴えを知る機会が限られていただけに、関係者は「非常に大きな一歩。取り組みの輪が今後さらに広がれば」と期待している。
県選管によると、選挙公報の点訳は1972年の衆院選から始まり、以降の参院選や知事選でも行われている。しかし、選挙期間が短く候補者が多い県議選については作業時間の確保が難しく、点字化が見送られてきた。
だが、視覚障害者団体などからの要望が強かったこともあり、県選管は実現の方策を検討。点字化の作業を担った藤沢市の障害福祉サービス事業所「神奈川ワークショップ」が、視覚障害者支援施設、県ライトセンター(横浜市旭区)などの協力を得て職員やボランティアらを増員し、30人態勢で対応することにした。
本来の選挙公報に記された訴えと同じ内容になるよう、パソコンや印刷機を使って慎重に作業。完成した選挙区ごとの点訳版はB5判で、10~20ページ程度の冊子となった。
ライトセンター利用者で50代の全盲の女性は「今までは選挙公報を誰かに読んでもらわなければ県議選の候補のことが分からなかった。投票したい人の訴えを好きなときに確認できる」と喜ぶ。一方で点訳の作業に関わった経験から「継続するのはかなり大変。きちんとした制度や仕組みが必要」と指摘する。
中途視覚障害者ら点字を習得していない人向けに、公報を読み上げた音声を収録したCDも作成。弱視者らを対象とした拡大文字版も作られている。センターの利用者約1500人には、これらのいずれかが届けられた。
県選管によると、前回2011年の統一地方選で道府県議選の選挙公報が点字化されていたのは、大阪や栃木など5府県のみ。全国的にはまだ広がっていないという。
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