薬物の使用で依存症や妄想や幻覚などの精神疾患に陥り、全国の病院で治療を受けた患者が、過去1年以内に主に使用した薬物は、危険ドラッグが35%で最も多く、覚醒剤を上回ったことが国立精神・神経医療研究センターなどによる2014年度の患者実態調査で分かった。
危険ドラッグは乱用者が交通事故を起こすなどの問題を起こし、警察が取り締まりを強化しているが、医療現場でも対応を迫られている実態が浮き彫りになった。
調査は昨年9~10月、精神科病床を持つ1598病院を対象に行われ、1201病院から回答を得た。同調査は2年ごとに実施している。
報告された薬物使用による精神疾患患者は1579例。今回の調査では初めて「過去1年以内に薬物を使用した患者」について分析。これらの患者1019例が使用した薬物は、危険ドラッグが35%を占め、最も多かった。覚醒剤は27%、睡眠薬などの処方薬は17%だった。危険ドラッグは覚醒剤に比べ入手しやすく、依存性が強いためとみられる。
危険ドラッグ使用者では、76%が薬物依存症の状態にあり、覚醒剤使用者の56%を上回った。
調査対象の中には、治療中の20歳代の男性が危険ドラッグを使用し、けいれん発作で運ばれた救命救急センターを退院してすぐに危険ドラッグを使い、問題行動を繰り返した例があった。警察庁のまとめによると、2014年に危険ドラッグが原因とみられる死者は112人に上る。
治療体制の整備は遅れている。薬物使用による精神疾患患者全体でみると、カウンセリングなど依存症の専門治療を受けた患者は39%にとどまった。
(2015年4月7日 読売新聞)
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