[ カテゴリー:事件, 子育て, 社会 ]

川崎中1殺害、なぜ「自己責任論」で被害者の母を非難

すっかり春めいてきましたね。花粉がたくさん飛んでいるようなので、娘には花粉症予防のためマスクをつけてほしいのですが、嫌がってすぐに外してしまいます。また、日差しがとても強いため、顔にベビー用のUVカットクリームを塗るのですが、保育園に着くとママと離れるのを嫌がって涙でクリームを流し去ってしまいます。地球環境とうまくやっていくための親心が効力を発揮するのはいつごろになるのでしょうか…。

またしても…シングルマザーをやり玉に

先月20日に川崎市で中学1年生の上村遼太さんが殺害された事件が日本中に衝撃を与えています。私も胸がつぶれる思いで、ニュースを見るのも辛つらいです。犯行の残忍さもさることながら、上村さんが犯行グループから度々暴力を受け、顔などに傷を負っていることに複数の周囲の人が気付いていたり、上村さんが「殺されるかもしれない」と言っていたりしたことから、「なぜ救うことができなかったのか」と悔やむ声が多いです。地域柄のことなどは分かりませんが、学校、友達、家庭など上村さんの周囲の人たちにできることはなかったか、と考えるのは当然の感情だと思います。

ところが、一部の人たちの間で上村さんの母親を非難する声が上がっていると聞き、「またか…」と暗い気持ちになりました。以前、幼い子どもがベビーシッターの男に殺されるという事件が起こった時も被害者の母親がやり玉にあげられましたが(以前の記事「ベビーシッター事件、責められるべきは母親か?」を参照してください)、既視感を感じます。

他者の立場、理解したいという気持ちがあれば…

被害者も加害者も未成年という事件で、保護者の存在に目を向けるのは分かりますが、百歩譲って親を責めるにしても、なぜ加害者ではなく被害者の母親なのでしょう。上村さんの母親は通夜の日に弁護士を通じてコメントを発表していますが、このような事態になってしまったことをとても悔やんでおられますし、女手ひとつで子どもを育てるために朝早くから夜遅くまで一生懸命働いていたため子どもと十分に接する時間が無かった様子がうかがえます。シングルマザーに対し自己責任論的な厳しい意見を持つ人は以前から少なくありませんが、安全圏から、最も傷ついて悔やんでいるであろう被害者の母親を責められるのはどのような神経の持ち主なのでしょうか。

人は様々な理由で離婚したり、シングルマザー・シングルファザーになったりします。そのすべてが回避したり我慢したりすることが可能な理由ではないし、むしろDVやモラハラのように我慢して婚姻関係を保つことが子どもにとって悪影響となり得ることだって多いです。また、実家とは絶縁状態だったり、経済状態がよくなかったり、むしろ親の方が頼ってきたりすることもよくあり、シングルで子どもを育てる人に頼れる実家があるとは限りません。シングルマザーの貧困、子どもの貧困という決して自己責任や怠慢なだけではない背景については長い間社会問題となっているので関連書籍やインターネットの記事も多く、少しでも他者の立場を理解したいという気持ちがあればその助けとなるものは簡単に手に入ります。

「正論」と称してSNSで糾弾、見識不足を自覚して

これに限らず社会に根ざしている問題をいつまでも「心構え」や個人の努力でなんとかなるはずだと言い続ける人は、想像力も勉強する力も両方ないことをアピールしているのと一緒だと思います。残念ながら、私の使っているSNSでは、社会的に恵まれ、いろんな意味で強い立場にいる人ほど「正論」と称して個人責任を糾弾するのが多くみられます。人は持って生まれた恵まれしものは当然と捉え、自分の努力で得たものは過大評価しがちなものです(医師にそういった人が多いのも自然なことなのかもしれません)。

しかし、著名人でなくとも、自分の考えを身内や世界中にSNSで発信できる今、見識の足りなさを露呈する結果になっていないか、少し気をつけた方がいい時代なのかもしれないと思います。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=114795

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