体と頭を同時に使い、認知症を予防しようとする取り組みが広がっている。神奈川県綾瀬市では市民有志が企画した「歌体操」、県はウォーキングと計算などを組み合わせた「コグニサイズ」の普及を目指す。
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという厚生労働省の推計値がある中、元気な高齢者を増やすことが狙いだ。
「もっと大きく動いて。広い花畑に舞うチョウチョのイメージでね」。講師がアドバイスすると、参加者から笑いが起こった。
今月2日、綾瀬市深谷中の市立中村地区センターで行われた「認知症にならない、させない! 楽しい歌体操」の一コマだ。笑いには、免疫力を高める効果があるとされる。
集まったのは、60~80歳代の女性約40人。「早春賦」や「花の街」「冬景色」など昔懐かしい唱歌などを歌いながら、腕を伸ばしたり足を開いたりする体操を約30分行った。幼少期や青春時代に親しんだ歌を歌うことで、当時の記憶や楽しかった思い出がよみがえり、脳の活性化につながる効果が期待できるという。
講師を務めた同市在住の認定心理士吉川ひろみさん(56)は「筋力の維持や有酸素運動だけでなく、歌を歌うことで滑舌や頭の訓練にもなる」と歌体操のメリットを話す。参加した市内の主婦(79)は「歌いながら楽しくできた。きつい運動ではないので、続けられそう」と笑顔を見せた。
超高齢化社会の到来で、元気な高齢者を増やすことは待ったなしの課題。厚労省は今年1月、10年後の25年には認知症の高齢者数が700万人に達し、5人に1人が認知症になるとの推計値を明らかにしている。これを受け、政府は同月、医療・介護分野の支援強化や社会参加の促進などを盛り込んだ認知症対策に関する初の国家戦略を決定した。
横浜市戸塚区では、06年頃から料理や旅行、パソコンなどのテーマに分かれ、グループワークを行うことで認知症予防を図る取り組みを続けている。人と交流しながら、手先を動かしたり、計画や手順を考えたりすることで脳を鍛える効果があるとされる。
県も認知症予防に向けた取り組みを14年度からスタートさせている。ウォーキングなどの運動に、しりとりや簡単な計算などの頭の体操を組み合わせる「コグニサイズ」だ。コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた造語で、すでに小田原市や箱根町など県西地域2市8町で体験教室などを実施。15年度予算案には「コグニサイズ」の全県展開に向け、約900万円の予算を計上した。県高齢社会課は「研修などで市町村のバックアップをしていきたい」としている。(坂場香織)
(2015年3月16日 読売新聞)
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