将来ある13歳の命が奪われた悲劇を、繰り返してはならない。
川崎市の中学1年生、上村遼太君が殺害された事件を受け、文部科学省が、児童生徒の安全に関する緊急調査を実施した。
7日以上連絡がとれず、校外の集団と関係があるなど、「生命や身体に被害が生じる恐れがある」小中高校生らは、全国で計400人に上った。このうち、243人を中学生が占めている。
調査では、自宅が非行グループのたまり場となり、保護者の協力も得られず、本人と連絡がとれない事例があった。先輩を通じて暴走族と交際し、暴行を加えられた生徒もいるという。
上村君が学校を休み、元高校生ら少年グループと付き合う中で、被害に遭ったことを考えると、看過できない状況と言える。
今回、学校や教育委員会が、子供を取り巻く危険性を総点検し、問題の端緒をつかんだ意味は大きい。あらゆる手段で子供への接触を図り、安全の確保に万全を期してもらいたい。同様の調査を継続的に実施することも重要だ。
今後の対応でカギとなるのは、警察との連携強化である。
各警察署と学校は地域ごとに学校警察連絡協議会を作り、定期的な会合を重ねている。都道府県警と教委が協定を結び、非行少年の情報を共有する仕組みもある。
少しでもトラブルの兆候があれば、学校は警察に協力を要請するのをためらってはなるまい。
警察の担当者は、地域の非行グループの活動を把握し、グループからの脱退を望む子供の相談にも乗っている。蓄積されたノウハウを問題解決に役立てたい。
学校が問題を抱え込まないことも大切だ。不登校などに、まず教師が対処するのは当然だが、ネグレクト(育児放棄)や貧困の家庭では、できることは限られる。
こうした場合に有効なのが、児童生徒と学校、家庭、行政機関の「橋渡し役」を務めるスクールソーシャルワーカーの活用だ。
社会福祉士などの資格を持つ職員が家庭を訪問し、困難な生活環境が判明すれば、児童相談所や福祉事務所と協力して支援する。
現在、全国の自治体に1000人以上が配置され、不登校対策などで成果を上げている。
ただ、川崎のケースでは、学校側から要請がなく、ソーシャルワーカーは派遣されなかった。
苦境にある子供を救うには、学校が外部の専門家の力を積極的に生かすことが欠かせない。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/education/20150314-567-OYT1T50131.html