うちの子供は自閉症(※)なのではないか──。そんな疑問がひとたび起きると、母親はどんどん心配になっていくようです。インターネットなどで得た情報から、不安を募らせるお母さんが増えています。3歳を過ぎても、言葉を話さない、視線を合わせない、呼んでも振り返らないなどの様子が見られたら、児童相談所、保健センターなどに相談し、受診につなげてください。
◆広汎性発達障害の共通の特徴
「広汎性発達障害」とは、社会性に関連する領域に見られる発達障害の総称です(※)。ここには、「自閉症」「アスペルガー症候群」「レット症候群」「小児期破壊性障害」などが含まれます。これらの疾病には、以下の3つの特徴が共通して当てはまります。
1.社会的な交流が乏しい
2.意思の疎通が苦手で、視線を合わすことができず、他人に愛着を示さない
3.日常生活の決まりにこだわり、同じ行動を繰り返す
◆自閉症の原因とは
広汎性発達障害はどうして起こるのでしょうか? 現在は、胎児性風疹、フェニールケトン尿症、染色体異常などによって生じると考えられています。自閉症は、とかく心の病気、育て方の問題などと思われがちですが、実は、脳内の情報処理能力の障害で、脳機能障害です。確定診断が可能な3歳以前に症状が現れる可能性もあります。自閉症と診断された場合、生涯にわたって機能障害を抱えていくことになります。
◆自閉症の症状
具体的には、生後すぐからあまり泣かない、あやしても笑わないなどがあり、2~3歳では葉が出ない、特定のおもちゃに執着する、視線を合わせない、名前を呼ばれても反応しない、癇癪を起こしやすいなどの傾向があります。これに加えて、感覚過敏の兆候もあります。聴覚ではサイレンや機械音などを嫌がり、視覚では絵本の特定ページに不快感を示すことも。ほかにも、味覚過敏によって偏食になる、触覚過敏によって他の人やものとの皮膚接触を嫌うといった傾向が見られることもあります。
◆自閉症という予断をやめること
大事なことは、これらの特徴が自分の子供に当てはまるからといって、ただちに自閉症と断言できるわけではないということ。あくまでも、専門家が医学的な検査などを経て総合的に判断するものですから、勝手に決めてしまう前に、医師に相談することが大切です。自閉症は、早期発見・早期治療が効果的と言われていますが、一方で生後3歳くらいまで診断は難しいとも言われています。わが子があまり泣かない、あやしても笑わない、表情が乏しいといった様子を心配するお母さんもいるでしょう。しかし、診断可能な時期までは、絆を築くこと、愛情を持って接することが重要です。
◆母親として子供に接していくことは同じ
子供がある程度成長して、もし自閉症などの診断を受けた場合は、専門家のアドバイスなどを積極的に受けて、育児に取り組んでいってくださいね。母親として子供に接していくことに変わりはありません。最初はショックだったけれど、苦労しながら育てているうちに愛着が深くなり、今では障害があったことを感謝している、というお母さんも少なからずいます。
※本文中の「自閉症」および「広汎性発達障害」という言葉は、アメリカ精神医学会作成の「DSM」(精神疾患の分類と診断の手引き)の旧版で使われていた用語です。最新の「DSM-5」では、これらは「自閉スペクトラム症」(ASD)という新たな分類方法が適用されています。ただし、臨床医が用いるもうひとつの国際的な疾病分類である「ICD-10」では、どちらの用語も現在も使用されています。
●南部洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師、株式会社とらうべ社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべを設立
Mocosuku編集部
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