昨年の全国特殊詐欺被害件数は1万3371件。マルチ商法に関する、国民生活センターへの相談は8807件。これだけ報道されても微減こそすれ、前年とさほど変わらない。なぜそこまで減らないのか、最新手口を取材した。
「お金の勉強会があるよ」と知人に誘われ、西新宿の貸しホールに向かった。
会場は満席、100人超が集まっている。いきなり、大金持ちになった成功者の体験談からセミナーが始まる。だが、大金を得た手段がわからない。
2時間後、やっと見えてきた概要は、マレーシアのインターネット総合サイトへの投資話。投資すると毎日高い利子がつき、友達を紹介すると、紹介者の投資額と利子から各1割のマージンが入るという。明らかに「ネズミ講」だ。
もう1団体のセミナーも参加してみたが、こちらも、東南アジアの楽天のようなサイトに投資するというもの。ネットという見えない世界が過剰な期待を膨らませているようだ。
やっかいなのは会場で体験談を披露する成功者は本業を持っていて、身元がしっかりしているようにみえるところだ。
何年も前から注意喚起がされている特殊詐欺(オレオレ詐欺)も減らない。今年1月だけで全国で1099件、被害額は39億円に上る。
警視庁の特殊詐欺担当者が言う。
「常識で考えれば『おかしい』と思えるのに、あるスイッチが入ると思考が止まってしまうことがあります。オレオレ詐欺では、『親心スイッチ』。子供のために慌てたり、子供に頼られているうれしさで、周囲が見えなくなるのです」
カネを詐取する口実は、「株が原因で会社のカネを横領」「小切手入りのカバンを紛失」「社内不倫で妊娠させた」など。昔から同じだが、今も1000万円を超える被害者がゴロゴロいるのだ。
今どき小切手を持ち歩いて商談するなどありえないし、ほかにもビジネスの常識から外れた部分が多い。
最大の対策は、携帯電話の番号を確認することだ。知らない番号は出ない方がいい。
■自己肯定感をくすぐる
昔「霊感商法」と呼ばれていた類いは、最近「開運商法」と呼ばれている。
開運商法の弁護団に属する、川井康雄弁護士(田村町総合法律事務所)が言う。
「占いや健康、マンガの雑誌広告で、数珠ブレスのプレゼントとか、無料の電話相談とかから始まるケースが多いですね。前出のような雑誌の読者で、電話をかけてくる場合、深い悩み事があると判断され、ダマす方からするといいカモというわけです。『本来は運がいいはず』『状況改善されないのはおかしい』と開運グッズをすすめられたり、高僧による特別な除霊を持ちかけられたりします。ここ2年は、実在するお寺とタッグを組んで詐欺を行うところも増えた。銀行口座の開設審査を通すために法人登録しているやからも多くなっているため、要注意です」
「あなたは運が悪い」ではなく、「本来は強運」という“自己肯定感”もポイントだ。相手に好感を持ってしまうので、ダマされていることに気づくのが遅れる。“悪運がふりかかる”と周囲への相談を止められるため、周りも異変に気づきにくい。
「インターネットで類似被害がないか、会社は実在するのか確認してください」(川井氏)
年度末は「医療費が戻る」とダマす「還付金詐欺」が増える。
携帯でATM操作を指示され、気がついたら相手の口座に振り込んでしまうパターンだ。1日で99万円振り込んだ被害者もいる。
「ATM操作で送金はできても、受け取ることはできません」(前出の警視庁特殊詐欺担当者)
「ウチの親が心配」という人は、コミュニケーションを密にすることだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150308-00000016-nkgendai-life