■カード2社 事業一時停止
コンビニエンスストアに設置され、手軽にチケット購入などができる「マルチメディア端末」を使って金をだまし取る新手の架空請求詐欺被害が増えていることが25日、警察当局への取材で分かった。犯人側がインターネット上で入手したプリペイドカードに電子マネーとしてチャージ(入金)させる手口で、カード会社がプリカへのチャージの停止に追い込まれるなど事態は深刻化。現金自動預払機(ATM)で振り込ませる「オレオレ詐欺」に対する警戒が強まる中、端末を使うことで摘発を逃れる狙いがあるとみられる。
警察庁によると、まとまったデータはないものの、全国的に発生しているとみられ、担当者は「ここ1、2年で目立ってきている」と話す。一方、大阪府警の管内では平成25年に初めて被害が確認され、26年は約20件に急増。今年も1月に3件発生した。
同府門真市では昨年11月下旬、30代女性の携帯電話に「アダルトサイトの未納金がある。本日中に連絡がないと法的手続きを取る」とメールが届いた。サイトを利用した覚えはなかったが不安になり、記載された電話番号に連絡すると、アダルト動画サイトの運営会社社員を名乗る男から「このままでは裁判になる。お金はコンビニで支払ってほしい」と告げられた。
女性はコンビニに行き、男に電話で指示されながら、十数桁の番号をマルチメディア端末に入力。出力された紙に記載された金額をレジで現金で支払った。
その後、12月上旬までの2週間、女性は1回当たり約3万円を数カ所のコンビニで255回にわたり、計約745万円支払った。
府警門真署によると、支払った金は男のプリペイドカードに入金されたとみられるという。
昨年10月には、富山市でもサイト利用料名目で男性が計461万円をチャージさせられる事件が発生。府警幹部は「詐欺の新たな手口。今後、被害がさらに増える可能性がある」と警戒を強める。
直接の被害者以外に、ネット上でプリペイドカードを提供するカード会社にも影響が広がっている。「Vプリカ」を扱うライフカード(横浜市)と「三井住友VISAプリペイドe」の三井住友カード(東京都)の2社は昨年12月、コンビニでのプリカへのチャージを停止した。担当者は「被害拡大を防ぐために、一時中止せざるを得なかった」と話すが、いずれも再開のめどは立っていない。
業界団体によると、これらプリカは作成時に本人確認が不要で、プリカの所有者でなくてもチャージは可能。こうした匿名性の高さから、プリカが詐欺の道具に使われたとみられる。
電子マネーに詳しい成城大経済学部の中田真佐男教授(金融論)は「詐欺被害を減らすには本人確認の徹底が必要だが、誰でも気軽に使える利便性は失われる。今のところ、犯罪被害の周知や、コンビニ店員が不審なチャージに目を光らせるなどの対応が現実的ではないか」としている。
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