『Microsoft Word』(以下、Word)には昔、イルカの「カイル」君というアシスタントがいたことをご存知の読者は多いでしょうが、編集記号の表示/非表示を使いこなしている人はどれくらいいるでしょうか?
何の話をしているのかわかった人は、原文筆者よりもWordに詳しいので、この記事をこれ以上読む必要はありません。
それでは、もうひとつ質問をします。「ウィドウ行」(ご参考)とは何でしょうか? これもわかるという人は、これから先を読む必要などまったくないでしょう。知らない人は、この続きを是非読んでみて下さい。自分ではWordを熟知しているつもりだが、実はわからないところも多いという段階の人にオススメの内容です。
文書を作成するためにただ文字入力をしているだけなら、今のままで問題はありません。けれどもMicrosoftは、Wordを「オフィスのスイス・アーミーナイフ」とでも呼べるほど便利で多機能な現在の姿に変えるために、莫大な研究開発費をつぎ込みました。その開発費の大半は、めったに使用しないけれども生産性を高めてくれる知られざる機能を生み出すために費やされました。それでは、『Microsoft Word 2013』に搭載された、仕事を楽にしてくれる機能を10個ご紹介しましょう。
表示をスッキリさせ、気が散らないようにする
文書を作成する時は、落ち着いた環境が必要です。Wordは、画面表示がごちゃごちゃしているという欠点があったため、表示のスッキリした落ち着いた作業環境を与えてくれるさまざまなエディタが登場しました。けれども、Wordが気に入っていてどうしてもほかのエディタを使いたくないという人は、視覚的に煩わしいリボンを非表示にできるショートカットキーが使用できます。Ctrl+F1で、リボンの表示と非表示を切り替えましょう。
「リボンの表示オプション」をクリックし、「リボンを自動的に非表示にする」を選択する方法もあります。
『Microsoft Word 2013』には、気を散らさずに文書を読むための特別な機能である「閲覧モード」が用意されています(もっとも、この機能は『Microsoft Word 2010』でもすでに搭載されていました)。「閲覧モード」は、タッチ入力対応のタブレット機器向けに設計されているため、日常使用するノート型PCでも便利に使えます。ALT+W-F(WとFを同時に押す)で、ささっとモードを切り替えましょう。
- (リボンメニュー上で)「表示」>「閲覧モード」
- (ステータスバー上で)右側にある「閲覧モード」ボタン
指でダブルタップするか、マウスでダブルクリックしてページを拡大表示し、図や表、画像などが画面一杯に表示されるように調整しましょう。
アウトライン表示を利用して文章を整理する
文章の全体像を把握しつつ、最初の原稿を素早く仕上げれば、文章作成の生産性は確実に向上するでしょう。「アウトライン表示」機能を効果的に利用すれば、大きな文書ならおよそ50%の生産性向上が見込めます。
「表示」タブをクリックすると、リボン上に表示形式を切り替えるためのボタンが現れます。「アウトライン表示」には、文章を9段階に階層化し、それらを並び替える機能があるため、複雑な文書の構成を最適な形に編集できます。「アウトライン表示」に切り替えると、選択した文章のレベルを上下させるためのボタンなどを備えた専用のツールバーが現れます。このツールバー上のボタンを利用して、選択した文章を表示させたり、折りたたんで非表示にしたりできます。
- 長い文書の中の特定のポイントに移動したい場合、「アウトライン表示」に切り替え、目的のポイントが含まれている見出しにジャンプしましょう。
- 下書きを素早く仕上げたい場合、「アウトライン表示」で主要なセクションの配置を考え、それから別の表示に切り替えて、本文を作成しましょう。
- 大きな文章のかたまりを並び替えて文書全体を構成し直したい場合、動かしたい見出しをドラッグアンドドロップしましょう。そうすれば、その見出しだけでなく、下層に含まれているすべての文章を一括で移動できます。また、上下の三角矢印ボタンでも移動できます。
- 見出しの書式を素早く変更したい場合、文字の大きさを変えたり、大文字を使ったりするのではなく、「スタイル」に用意されている「見出し1」や「見出し2」を使いましょう。
ブレインストーミングのツールとしてWordを使う
好きな場所をダブルクリックし、言葉を入力しましょう。カーソルをどこに置けばいいかなんていう面倒なことを気にする必要はありません。これはWordで可能な最もフリースタイルライティングに近い文章作成の方法といえるでしょう。この機能は「クリックアンドタイプ」と呼ばれ、『Microsoft Word 2002』以降のバージョンに搭載されています。これを使用するには、表示形式を「印刷レイアウト」か「Webレイアウト」に切り替える必要があります。
この機能は図やテキストを挿入する際にとても便利ですが、間に合わせのマインドマップツールとしても利用できます。
3ステップで表をグラフに変換する
多くのデータが詰め込まれた見事な体裁の表と、その表のデータが美しく視覚化された図が用意されている場合、あなたならどちらを選びますか?
人間は視覚を重視する生き物ですから、大抵の人は後者を選択するでしょう。Wordには、表形式の情報を簡単に図に変換できる機能が搭載されています。データの量があまり多くないのであれば、わざわざ『Excel』を使うまでもありません。Wordで図を作りましょう。変換したいデータの入った表を選択し、次の3つの操作を行います。
- リボンメニューの「挿入」タブをクリックします。
- 「テキスト」グループの中の「オブジェクト」をクリックし、「オブジェクト」のダイアログボックスを開きます。
- 「オブジェクトの種類」の一覧の中から「Microsoft Graph Chart」を選択し、「OK」をクリックします。
Wordは、表のデータを見事なグラフにして表示してくれます。文書内のほかの要素と同じように、グラフの書式も自由に設定が可能です。
Wordで数式を入力する
数式が扱えるソフトといえばExcelしかない、と考えている人も多いでしょう。Wordの歴代バージョンには、『Equation Editor』というツールが付属していました。『Microsoft Word 2013』では、このツールは単に「数式」ツールという名称になっています(「挿入」タブから、リボン内の数式ボタンをクリックして使用します)。「挿入」>「数式」をクリックし、新しい数式を入力します。
「数式」ツールバーを使用すれば、数学や物理学、化学で使用する複雑な数式を作成できます。Wordには、よく使われる数式がいくつも組み込まれており、クリックひとつで文書に挿入できます。
下のYouTube動画では、「Lynda.com」が数式入力機能の使い方を簡潔に説明してくれています。
クリップボードに24個のデータを保存する
Windows標準のクリップボードとは異なり、Word独自のクリップボードには、最大24個のデータを保存できます。「ホーム」タブをクリックし、「クリップボード」という文字の横にある小さな右下向き矢印のボタンをクリックすると、左側にパネルが表示されます。ショートカットとして、Ctrl+Cを2回押すと「クリップボード」パネルが開きます。この機能のおかげで複数のデータを切り取ってコピーしたり、文書内の好きな場所に移動したりできます。
文章を瞬時に翻訳する
『Microsoft Office』は、『Microsoft Translator』を使用してすべての翻訳を行います。『Microsoft Word 2013』では、「校閲」タブの「翻訳」機能を使いましょう。翻訳機能を選択すると、右側に「リサーチ」タブが現れ、さまざまな言語の中から目的のものを選択できます。単語や文を翻訳したり、文書全体を翻訳してウェブブラウザに結果を表示させたりできます。
カーニング機能でテキストを美しく見せる
カーニング機能を使用すれば、隣り合う2つの文字の間隔を調整して文書を視覚的に美しく整えることができます。文書をデザインする時は、1つひとつの活字にカーニングが必要になります。たとえば電子書籍の表紙を作成する時など、大きなフォントを使ったテキストをデザインする際には、カーニングは重要な工程になります。
Wordの標準設定では、カーニング機能は無効にされていますが、通常の使用では特に気にする必要はありません。けれども、たとえばレポート5ページ分の宿題を提出しなければならない時などは、苦労して文字数の多いレポートを書く代わりに、文字の間隔を広く設定して労力を省いてしまいましょう!
「ホーム」タブの中の、「フォント」グループの右下にある小さな右下向き矢印のボタンをクリックしましょう。ショートカットキーは、Ctrl+Dです。「フォント」ダイアログが開きますので、「詳細設定」タブで「カーニングを行う」にチェックを入れます。カーニングを行う文字のポイント数を指定するボックスに小さい数字を入力して実験してみましょう。カーニングを行っても美しく見えない文字やフォントサイズもあるということを覚えておいてください。
文書を検査する
最近は、あらゆる種類のデータが日常的に共有されるようになりました。そのため、セキュリティーの重要性も高まっています。「ドキュメント検査」は、文書の中に他人には知られたくない情報が含まれていないかを検査するWordの中心的な機能です。文書の作成時はもちろん、文書を編集する時でさえ、ユーザーについての何らかの情報が自動的にファイルに追加されます。「ドキュメント検査」は、文書を共有する前に、このような情報を消去する手助けをしてくれます。
「ファイル」>「情報」>「共有準備」>「問題のチェック」>「ドキュメント検査」と進みます。
検査したい項目にチェックを入れ、選択した内容が文書に含まれていないか検査します。検査の結果、プライベートなデータを含んでいることが明らかになった項目は、「!」マークが表示されます。「!」マークが付いた項目には、「すべて削除」ボタンが表示されるので、各々のボタンをクリックすると、プライベートなデータはすべて削除され、その文書を他人と共有する準備が完了します。
『MS Office』の公式サポートページには、「ドキュメント検査」の使用手順が詳細に説明されています。
「隠し文字」を活用する
「隠し文字」機能は、本当に隠れた機能のため、その存在自体があまり知られていません。「隠し文字」とは、印刷されない文字属性の1つであり、その特性を活かした便利な活用法があります。「隠し文字」は、次のようなさまざまな場面で有効に使うことができます。
- 答えを隠して簡単なクイズを作る。
- 隠し文字を挿入して、印刷する文書のレイアウトを調整する。
- 1つの文書を、一方はすべての文字を、もう一方は一部の文字を隠して、2通りの方法で印刷する。「隠し文字」をこのように利用すれば、文書を2種類作成したり、文書から文字を削除したりする必要がない。
- 他人に見られたくない機密情報を一時的に隠す。
隠し文字の表示/非表示を切り替える
- 表示/非表示を切り替えたいテキストを選択します。
- 「ホーム」>「フォント」グループの小さな右下向き矢印のボタン>「フォント」ダイアログボックス内の「フォント」タブと進み、「隠し文字」にチェックを入れたり外したりします。
- 隠し文字を印刷するには、「ファイル」タブ>「オプション」>「表示」と進み、「隠し文字」にチェックを入れ、さらに、「隠し文字を印刷する」にもチェックを入れて、「OK」をクリックします。
印刷されない文字というのは、文書のレイアウトに関する問題をユーザーが解決し、最適な体裁に仕上げるために使用する「編集記号」です。
たとえば、英語表記の場合、単語と単語の間隔は半角スペース1つ分でなければなりません。また、段落の切れ目は、正しく改行しておく必要があります。さらに、タブはすべて適切な位置に並んでいなければなりません。そのほかにも、表のセルの体裁をきれいに揃えたり、前後のページの体裁が自然につながるように調整したりする必要もあります。編集記号はそうした作業の際に必要になります。
段落記号やタブマーカー、スペース記号、改行記号、改ページ記号、オブジェクトのアンカー、隠し文字などは、Word文書のレイアウトを操作するのに便利な、印刷されない要素の一部に過ぎません。「ホーム」タブの「編集記号の表示/非表示」ボタンをクリックすれば、それらの印刷されない文字を表示できます。ショートカットキーは、Ctrl+*です。
注目すべき点:
Word 2013では、文書の一部を展開したり、折りたたんだりできるため、選択した情報だけを表示することもできます。
10 Hidden Microsoft Word Features That Will Make Your Life Easier|MakeUseOf
Saikat Basu(原文/訳:丸山佳伸、吉武稔夫/ガリレオ)
Photo by Shutterstock.
http://www.lifehacker.jp/2015/02/150223microsoft_word10.html