患者、周囲の理解求める
運転手のてんかん発作が原因で小学生6人が死亡した事故などをきっかけに、昨年5月、持病が原因の交通事故を厳罰化する自動車運転死傷行為処罰法が施行されたが、てんかん患者の約6割が差別や偏見が強まったと感じていることが、日本てんかん協会(東京都豊島区、鶴井啓司会長)の調査でわかった。
調査は昨年7~8月、全国の20歳以上のてんかん患者や保護者らを対象に行われ、2022人が回答した。「差別や偏見が強まった」と答えた人は、「とても」(27%)と「やや」(30%)を合わせて57%だった。
このうち34%が「(勤め先から)解雇されたり心ない言葉をかけられた」と回答。差別や偏見が強まったと感じる場面は「日常生活」が67%、「職場」が42%、「学校」が10%だった。
持病による事故をなくすために必要なこととしては、「病気を正しく理解してくれる社会」や「運転不可でも就職で不利にならない保障」など、周囲の支援を挙げる声が多かった。
同協会副会長で静岡てんかん・神経医療センターの久保田英幹・統括診療部長は「発作が出なくなったり、意識を失うほどの発作はなかったりする人が多いのに、病気の危険性だけが強調され、誤解につながっている。持病で運転ができなくなった人には、公共交通機関の交通費を割り引くなどの施策や、周囲が病気を正しく理解して患者が病気を隠さずに済む社会作りが必要だ」と話している。
自動車運転死傷行為処罰法 発作で意識を失うなどの症状がある人が、発作の前兆や服薬を怠るなどで危険を知りながら運転して事故を起こし、人にけがを負わせたり、死亡させたりした場合は危険運転致死傷罪が適用される。以前に適用された刑法の自動車運転過失致死傷罪では最高で懲役7年以下だったが、15年以下に引き上げられた。
(2015年2月18日 読売新聞)
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