立春が過ぎたとはいえ、寒い日が続く。ついつい動かなくなりがちな寒い時期には、女性の大腿(だいたい)骨折が増える。70代以上の高齢者が多いが最近では40~50代でも増えている。予防には普段の運動や食事による必要な栄養分の摂取が重要だ。(兼松康、写真も)
■閉経後の女性は特に注意を
「寒いからといって外出を控え、じっと過ごしていると、筋肉や関節が凝り固まり、たった1センチの段差につまずくことがある」
こう話すのは、日本骨粗鬆症(こつそしょうしょう)学会理事で、「健康院クリニック」(東京都中央区)の細井孝之副院長だ。
日本整形外科学会骨粗鬆症委員会の調査(平成23年度)によると、10月から翌年3月までの大腿骨付近の骨折数は、4~9月に比べ、約2割増加。大腿骨骨折患者の約8割を女性が占める。閉経後の女性はホルモンバランスの変化で、骨を作る動きが急速に衰え、骨密度や骨質など、骨の強度が低下しやすいためだ。
大腿骨骨折は70代以上の高齢女性に多いが、最近は40~50代で増加傾向にあるという。
細井副院長によると、大腿骨と骨盤をつなぐ股関節の付け根付近にある大腿骨頚部(けいぶ)と転子部と呼ばれる部位が折れてしまうと、治りにくく、その後、寝たきりになるケースもある。
この部分の骨折は、よろけて後方に倒れた場合がほとんど。よろける原因は、体の重心を支える筋肉である大殿(だんでん)筋などの筋肉量が減少したり、機能が低下したりするほか、足首や膝の関節の可動域が狭くなることだという。
予防のためには散歩など運動をすることが大切だ。足首の関節の可動域が狭くならないよう、つま先を上下に動かすだけでも有効だという。
屋内では家電製品のコードやカーペットと床の境目などちょっとした段差が転倒につながることがある。東京消防庁の25年の救急搬送データによると、高齢者の転倒による事故の発生場所は、屋外よりも屋内の方が10倍以上多い。
細井副院長は、「床に物が散乱しないように注意するほか、滑りやすい浴室などには手すりをつけた方がいい」とアドバイスする。
■カギ握る2つの栄養素とは
カルシウムやビタミンDといった栄養の摂取も大切だ。ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進し、転倒予防にもつながるとされる。だが、寒さで外出を控えると、紫外線を浴びた際にできるビタミンDが十分に体内で合成されなくなることもある。
カルシウム不足も指摘される。一般社団法人「臨床栄養実践協会」の足立香代子理事長は、「日本人の成人女性の1日平均摂取量は、目標の700ミリグラムに対し、200ミリグラム以上も足りない」と説明する。牛乳はカルシウムを多く含むが、寒い冬には飲みづらい。
足立理事長が名誉栄養管理室長を務める東京高輪病院(同品川区)では、骨の強化対策などとして、カルシウムとビタミンDを多く含むヨーグルトを25年4月から入院患者用の食事メニューに取り入れた。
「食欲がなくても80グラム程度のヨーグルト1個なら手軽に取りやすい」と足立理事長。「健康維持のためには、継続することが大切だ」と話している。
■背骨の「静かな骨折」にも注意を
大腿骨の骨折に並んで、日本人の高齢女性などに多いのは、背骨(脊椎)の圧迫骨折だ。骨密度などの関係で、頭部の重量を支える脊椎が潰れてしまう現象で、6割の人が痛みを伴わないため「静かな骨折」とも呼ばれる。
細井孝之副院長は、「身長が2センチ以上低下すると、脊椎を構成する椎骨の5割程度は潰れている」と指摘。背中が曲がっている人の多くが圧迫骨折によるものだという。
細井副院長によると、背中を壁に向けて立った際、背中とお尻、そして後頭部の3点が壁にきちんとつくかどうか、普段からのチェックが重要だ。
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