応急手当て 乳児→背中たたく、幼児→腹を上へ圧迫
まもなく節分。豆まきは楽しい行事だが、子どもが豆を気管や気管支に詰まらせる事故も起きている。専門家は「3歳になるまでは、節分の豆やピーナツを食べさせないで」と注意を促す。
「小さな子どもが豆を食べる時、泣いたり笑ったりして不意に吸い込み、気管に詰まってしまうことがあります。節分の時期に目立つ事故です」。国立成育医療研究センター(東京)呼吸器科医長の川崎一輝さんは指摘する。
同センターでは、2005~14年の10年間に、子どもが豆類を気管などに詰まらせて受診した事例が42件あった。1歳前後の子に多いが、4、5歳児でも起きている。豆の種類はピーナツが19件と最多で、煎った大豆(10件)、枝豆(9件)が続いた。大豆での事故の8割は、節分のある2月に発生している。
こうした豆類は、硬くて滑りやすく、小さい。歯が生えそろわず、そしゃく力が不十分な子どもはうまくかみ砕けず、直径7~9ミリの子どもの気管に入ってしまう。気管や気管支に入った豆を取り除くのは困難で、全身麻酔をかけて内視鏡などを使った手術になることが多い。
「のどや気管などに異物が詰まった時は、激しくむせてせき込むなどの症状が出ます」と川崎さん。息をすると胸などから「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえることもある。
気管を完全にふさいだ状態が数分間続くと、死に至るか、助かっても脳の機能に障害が残る場合がある。左右どちらかの気管支に異物が落ち、症状が一時よくなるケースもあるが、「豆が残っていると、肺炎を起こす危険もある。速やかに医療機関を受診して」と川崎さんは訴える。
万一の際、応急対応をどうするかは、年齢や症状によって異なる。
せき込んでいても、息ができているなら、自然に任せ、できるだけ泣かせないようにしながら、急いで医療機関に連れて行く。むせた際、子どもを逆さにして豆を口の方に戻そうとする人がいるが、症状が悪化する場合があるので避ける。
一方、ものが詰まって声が出せず、窒息しているような状況では、すぐ救急車を呼ぶ。その上で、乳児なら片手で体を支え、もう一方の手のひらで背中をたたく、幼児なら背後から両腕を回し、腹部を上方へ圧迫するなど、年齢に応じた処置を行う。
関係学会やメーカーも注意喚起に努めている。
日本小児呼吸器学会(東京)は、餅やこんにゃく入りゼリーを喉に詰まらせるだけでなく、ピーナツや節分の豆などでも気管に詰まらせて窒息する危険があるとして、13年、予防のポイントや事故が起こった際の対応を示した。ホームページでも公開している。
菓子メーカーの亀田製菓(新潟市)は、13年7月から、ピーナツが入った菓子約30種類のパッケージの裏側に、「お子様が喉につまらせないよう必ずそばで見守ってあげてください」と表示している。(谷本陽子)
事故予防のポイント
・3歳になるまで、ピーナツなどの豆類は与えない
・子どもが落ちている豆を食べないよう、豆まき後はしっかり拾う。豆が小分けにされた商品を袋入りのまま利用すれば、拾い漏れがない
・食べ物を口に入れた子どもが、横になる、走る、跳びはねる、ふざけて大笑いするなどは危険
・子どもが口に入れてしまった場合、驚かせたり泣かせたりせず、自分で吐き出させるか、そっと口から取り出す
(日本小児呼吸器学会の資料などを基に作成、イラストも)
(2015年1月28日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=111287