腰痛を経験したことがあるという人は、かなりたくさんいるのではないでしょうか?
東京・銀座で女性100人に聞いたところ、81人に腰痛の経験があるという答えでした。
実は、腰痛の経験がある人のなかで、およそ85%がMRIなどの画像から診断がつかない「原因不明の腰痛」(非特異的腰痛)と言われています。(「腰痛診療ガイドライン」監修・日本整形外科学会・日本腰痛学会 2012年)
しかし、最近、研究が進むなかで、「原因不明」と言われていた腰痛の原因を、画像以外の方法で突き止めることができるようになってきました。
そこで今回のスゴ技Qでは、腰痛に悩まされているサポーターとともに、「原因不明の腰痛」と「サヨナラ」するために、セルフチェックの方法、痛みをとる方法、予防のためのトレーニング法などをお伝えしました。
■整形外科医による腰痛の原因チェック法
自分の腰痛の原因が、加齢や姿勢の問題と思い、しかたがないと思っている方は多いのではないでしょうか。
整形外科医の金岡恒治さんは、「原因不明」の腰痛がどこからきているか、その痛みの原因を知ることが腰痛克服の第一歩だと言います。
金岡さんの研究によると、それは、腰回りにある、椎間板、椎間関節、仙腸関節の3か所です。金岡さんは、問診に加え、4つのステップで診断を行います。それは、指で押して痛む場所を調べる、体を前後左右に曲げる、あおむけに寝て脚を上げる、そして、筆で脚の感触が鈍っているかどうか、です。
仙腸関節が原因の場合は、痛む場所を指で押すこと、そして、椎間板・椎間関節が原因の場合は、体を前後左右に曲げて痛むかどうかが、決め手となります。
あおむけに寝て脚を上げたときに痛んだり、筆で触っても鈍くしか感じなかったりという症状がある場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など病気の可能性が疑われるため、整形外科を受診してください。
主な原因3か所に痛みが出る仕組み
・仙腸関節による痛みは、出産や打撲などで関節が緩んで骨にずれが生じ、関節に負荷がかかって関節にある神経が刺激を受けて痛みが生じると考えられます。
・椎間関節は背骨の後ろ側についています。椎間板が老化により潰れてきたり、ふだんから体を反った姿勢を続けていたりすることから、痛むと考えられます。
・椎間板による痛みが生じるのは、椎間板の組織が破れ、それを修復するため、椎間板の内部に血管や神経が入り込んだ状態で、椎間板の中の圧力が高まると、神経が刺激を受けて、痛みが出ると考えられます。
■「あさイチサポーター」の腰痛の原因のチェック法
金岡さんオススメ!セルフチェック法
(1)痛む場所を指で押す。
・腰の高さで、背骨の中心から指2本分ほど外側が痛む→仙腸関節
・背骨のラインでウエスト付近が痛む→椎間板、椎間関節
(2)体を曲げる。
<前に倒して痛みが出る場合>
→椎間板が原因の可能性あり
<後ろに反らして痛みが出る場合>
後ろに反らしてから左右に曲げて痛みが出る場合
→椎間関節が原因の可能性あり
(3)脚を上げる。
(4)筆で触る。
→(3)(4)とも、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの病気の可能性があります。整形外科にご相談ください。
<取材協力>
金岡恒治さん(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 整形外科医)
■痛みをとる&痛みのない状態キープのための筋肉トレーニング
痛みの場所を特定したら、今度はその痛みをとるスゴ技です。日本代表からジュニアまで、飛び込みの選手をサポートする、理学療法士の成田崇矢さんにその技を教えていただきました。
「あさイチサポーター」の木村さんは、特に左側の「仙腸関節」に強い痛みを訴えていました。成田さんは、左側の仙腸関節が緩み、左側の腸骨が前に倒れて、関節部分を圧迫しているためと判断しました。そこで、成田さんが、腸骨が前に倒れていたのを元の位置に戻すようにし、その状態で6回、痛みが出た動きを繰り返した結果、痛みがなくなりました。
「あさイチサポーター」早瀬さんの腰痛の原因である「椎間関節」に対しては、痛みを感じている椎間関節部分の背骨部分を上に持ち上げて、椎間関節への圧迫を減らし、痛みをとることに成功しました。
成田さんは、痛みがなくなったあと、その痛みがない状態を保つことが非常に大切だと言います。そのために成田さんがオススメするのが、「腹横筋」という、体の奥にあるコルセットの役割で腰を安定させる筋肉と、「多裂筋」という、背骨ひとつずつについて、腰を安定させる筋肉を鍛えることです。骨で覆われていない腰回りを補強することが腰痛の改善、予防に大切だからです。
金岡さんらの研究では、これらの筋肉を鍛えたことで腰の痛みがほとんどなくなったというデータもあります。
では、この2つの筋肉を鍛えるトレーニングとはどんなものでしょうか。
まずは、腹横筋を鍛える基本の動き、「ドローイン」。以前あさイチでもおなかのぽっこりをなくす運動として紹介しました。成田さんが教える「ドローイン」は、横になって、ひざを曲げ、息を吐きながらお腹を引っ込める方法です。腰骨を床に押しつけて、おへそを引き込むようにするのがポイントです。
ドローインが出来たら、腹横筋を鍛えつつ、同時に多裂筋も鍛える、「ちょっと待って」バランスがオススメです。
やり方は、四つんばいになり、肩の下に手を置き、脚のつけ根の下にひざがくるようにします。
この姿勢でお腹をへこませてドローイン。そして、手を上げるとさらに腹横筋が鍛えられます。
次に、手と逆側の脚を上げて10秒間キープ。反対側も同様に行います。回数を多くすることよりも、なるべく毎日続けることが、成田さんのオススメです。
<ちょっと待ってバランス>腹横筋と多裂筋を同時に鍛えられる動き
(1)肩の下に手、股関節の真下にひざがくるように、四つんばいになる
(2)この姿勢でドローインする
(3)片手を上げる(腹横筋が働く)
(4)手と逆ガワの脚を上げる(多裂筋が働く)
(5)10秒間キープ(2つの筋肉が同時に動く。無理でも反対側も同様に行う)
<ポイント>
腰骨を床に押しつけて、おへそを引き込むようにすること
<取材協力>
成田崇矢さん(健康科学大学 健康科学部 理学療法学科 准教授 理学療法士)
■腰以外の意外な場所をストレッチ
腰痛予防には、おなか周りの筋肉を鍛えるのに加えて、太ももの筋肉の柔軟性を高めることが大切です。太ももの筋肉を柔らかくすると、骨盤が傾きやすくなり、腰痛予防には効果的です。
日常生活で、顔を洗う、洗濯物を干すといった腰を曲げる動作のとき、太ももの裏側の筋肉が伸びないと、骨盤が傾かずに、腰だけで体を曲げることになり、負担は増します。しかし、太ももの裏側の筋肉が伸びると、骨盤が傾き、骨盤と腰で体を曲げる分、腰への負担を減らし痛めにくいのです。
そこで、理学療法士の成田さんに、座りながらできる太ももの裏側の簡単ストレッチを紹介してもらいました。座った状態で骨盤を前に倒し、その状態のまま、ひざを伸ばします。この時に、太ももの前側の筋肉にグッと力を入れると、後側にある太ももの筋肉のストレッチ効果が高まります。
太ももストレッチ
(1)座った状態で骨盤を前に倒す。
(2)骨盤を前に倒したままひざを伸ばす。
(3)息を止めずに10秒間キープ。
(4)反対側も同様に行う。
<ポイント>
太ももの前側の筋肉にグッと力を入れるとさらにストレッチ効果が高まる。
<取材協力>
成田崇矢さん(健康科学大学 健康科学部 理学療法学科 准教授 理学療法士)
NHK「あさイチ」2014年11月4日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/asaichi/life/asaichi-20141104-a-001.html