目的
リモコン、キッチンタイマー、体温計、玩具など家庭内にある様々な商品にボタン電池が使用されています。
PIO-NETには2009年4月以降(2014年9月末までの登録分)、ボタン電池を誤飲した、あるいは誤飲しそうになったという報告が3件寄せられていました。被害者の年齢別では、すべてが0~1歳児となっており、そのうち1件は2カ月の入院を要する重大事故でした。
また、医療機関ネットワークには、子どもがボタン電池を誤飲したという報告が2010年12月から2014年3月末までに51件、誤飲の疑いを含めると93件寄せられていました。年齢別では、3歳以下が50件と大半を占めており、中でも0~1歳児が38件(76%)と非常に多く、玩具以外の商品での事例も見られました。
子どもを対象にした玩具では、一般社団法人日本玩具協会の玩具安全基準(以下、「ST基準」という。)で、「ボタン電池の蓋は、工具等を使用しないと容易に開かない構造でなければならない。」などの記載があり、STマークのある玩具については一定の安全性が担保されています。一方、それ以外の商品については、JIS C8513:2010「リチウム一次電池の安全性」において、「リチウム一次電池の電池室は子供が簡単に電池を取り出せない構造にする。」ことを推奨しているほか、一般社団法人電池工業会が安全確保のための機器設計に関するお願いとして、幼児が簡単に電池室のふたを開けることができない構造を求めていますが、参考扱いであり規格基準ではありません。
そこで、「家庭内でボタン電池が使用されている商品」の電池室のふた(以下、「電池ぶた」という。)の構造などを調査し、ボタン電池誤飲による被害の未然防止のため消費者に注意喚起を行うこととしました。
ボタン電池の危険性
ボタン電池とはその直径が厚さよりも大きな電池で、その形状によりコイン型とボタン型があります。コイン型の多くは、ボタン型に比べると厚みが薄く、直径が2cm前後と大きく、硬貨によく似た形状をしています。また、コイン型で多く使われるリチウム電池は、放電電圧がボタン型の1.5Vに比べて3Vと高いものがあり、電池を使いきるまで一定の電圧を保持する特性があります。
ボタン電池を飲み込んだ際に、消化管に接触した電池から電流が流れると、電気分解により電池の外側(マイナス極側)にアルカリ性の液体が作られます。このアルカリ性の液体はタンパク質を溶かす性質をもっており、短時間に消化管の壁に損傷が起こることがあります。
テスト結果
電池ぶたの構造
ねじ止めなど工具を使用しないと電池ぶたを開けることができない構造のものがある一方で、工具等を使用せずに電池を取り出せてしまうものもありました。
落下試験
フローリング床への落下試験を行ったところ、高さ30cmからの落下で4銘柄、高さ138cmからの落下で5銘柄の電池ぶたが開き、電池が飛び出しました。
誤飲等に関する注意表示
誤飲等に関する注意表示は、全体の約7割の銘柄に記載がありましたが、誤飲によって化学やけどを引き起こす可能性があるなど、誤飲時の危険性に関する注意表示は、全ての銘柄に記載がありませんでした。
消費者へのアドバイス
- ボタン電池を使用した商品の中には、工具等を使用しなくても電池を取り出せてしまうものがありました。乳幼児がいる家庭では使用や保管には注意しましょう。
- 万一ボタン電池を飲み込んだ場合は、直ちに医師の診断を受けましょう。
業界・事業者への要望
- 電池の誤飲事故を未然に防止するために、子どもが電池を取り出せない構造にするなど、より安全な構造の商品開発を要望します。
- ボタン電池の誤飲に関して、消費者に十分に周知がなされるよう、商品などへの注意表示を要望します。
行政への要望
ボタン電池の誤飲事故を防ぐために、より安全な構造の商品開発を行うよう業界・事業者への指導を要望します。
要望先
- 経済産業省 製造産業局 産業機械課
- 経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課
- 経済産業省 商務情報政策局 日用品室
- 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室
- 一般社団法人日本医療機器産業連合会
- 一般社団法人日本計量機器工業連合会
- 一般社団法人日本電機工業会
- 一般社団法人日本時計協会
- 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 内閣府 消費者委員会事務局
- 厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 医療機器・再生医療等製品審査管理室
- 一般社団法人電池工業会
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20141030_1.html