10月27日、リベリアに滞在したあと日本に入国した男性に発熱が確認され、エボラウイルスを含めて何らかの病気に感染していないか検査を受けることになりました。幸い、この男性にはエボラウイルスは検出されなかったようですが(要経過観察)、エボラ出血熱そのものはいまだに西アフリカで猛威を振るっており、まだまだ予断を許さない状況が続いています。
ところで、エボラ出血熱の治療に使えるかもしれない薬として、富士フイルムが開発した「アビガン錠」(ファビピラビル)が有望視されています。アビガン錠は、もともとインフルエンザの薬として開発されたもの。いったいなぜ、この薬がエボラ出血熱に有効だと考えられているのでしょうか?
アビガン錠は、身体に侵入したウイルスの細胞内での遺伝子複製を防ぐ「RNAポリメラーゼ阻害剤」と呼ばれるものです。このため、インフルエンザウイルスの種類を問わず抗ウイルス作用が期待できると言われています。また、また、ウイルスは遺伝子の複製の仕方によっていくつかの分類ができ、インフルエンザウイルスもエボラウイルスも「RNA一本鎖マイナス」に属します。さらにマウス実験での有効性が論文発表されていることもあって、「アビガン錠」がエボラウイルスに効果が期待できるのではないかと考えられています。
インフルエンザの治療薬としては「タミフル」(オセルタミビル)がつとに有名ですが、こちらはエボラ出血熱には効かないのでしょうか? タミフルは「ノイラミニダーゼ阻害剤」と呼ばれるもので、細胞内で増殖したウイルスが放出されるのを防ぐ薬です。ウイルスへの作用の仕方がアビガン錠と異なるため、タミフルはエボラ出血熱に対しては効果が期待できないと言われています。
さまざまな感染症に効果が期待できるファビピラビルですが、問題もあります。動物実験において、胎児に対する催奇形性の可能性が指摘されたのです。このため基本的に、妊婦や妊娠の可能性がある患者には使えません。インフルエンザの治療薬としても、他の薬が効かない新型インフルエンザが大流行したときのみ使用が認められるという特殊な承認形式になっています。
エボラ出血熱においては、まだ有効な治療手段が確立されていません。そのため、アビガン錠への期待が大きくなってきています。富士フイルムは、フランス政府とギニア政府は11月中旬にもエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を開始すると発表しています。また米国政府とも、米国での治験のパートナー企業を通じ、アビガン錠をエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう、治験に向けた準備を協議しています。
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