天災や大事故では「災害弱者」とされる人々が大きな打撃を受ける。病人や高齢者、障害者、妊産婦、幼児をはじめ旅行者、外国人らだ。発生から3年半過ぎた 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故も例外ではなかった。状況を把握できなかったり、障害物で行く手を妨げられたりして、被害を増幅させた。今後の災 害時に同じ轍[てつ]を踏んではならない。復旧・復興に合わせ、弱者に配慮した避難対策や地域づくりを強めたい。
県社会福祉協議会などの調べに よると、震災で亡くなった人は発生から3カ月間で、障害者の割合が他の住民と比べて高かった。避難所や仮設住宅でも、さまざまな「障壁」が苦しめた。「段 差や階段が多く、一人では行動できなかった」「文字が小さく、掲示が見えなかった」「耳の聞こえないことが周りに分からなかった」といった声をお年寄りや 障害者から聞く。孤立しがちになり、原発事故関連死にもつながりかねない。
対策では、不自由な体でも楽に行動できるバリアフリーや、全ての人に安全・安心で快適な製品、施設、情報を提供するユニバーサルデザイン(UD)が重要となる。
県は、平成22年に定めた「ふくしまUD推進計画」を昨春に改定した。震災時の反省と経験を踏まえ、防災・減災の視点を盛り込んだ。仮設住宅の改善、迅速 な避難につながる道路整備、点字や多言語による表示などを25年度から8年計画で進める。災害弱者の避難支援プラン策定や障害者らを受け入れる福祉避難所 の指定を全市町村で達成する-などを指標として設けた。県民への周知・啓発を含めた着実な実行を望む。
民間の取り組みも不可欠となる。県印刷工 業組合はメディアUDの教育検定を今月27、28の両日、福島市で行う。視覚障害者や高齢者にも分かりやすいチラシやポスターなどで情報発信する知識や技 術を指導・認定する。「製作担当者だけでなく、企画・発注者も参加を」と呼び掛ける。11月に開かれるUDの国際会議は東京のほか、郡山市で公開シンポジ ウムやワークショップを催す。
「たとえ通路にスロープが整備されていても、途中に荷物や自転車が置かれていれば、車椅子は使えない。利用者への 無関心が壁になる」との指摘がある。本県のUD推進計画は「“思いやり”をシステム化」を独自の特色として掲げる。周囲の気遣いが設備や施設を生かす。災 害弱者に優しい地域は、取りも直さず健常者に暮らしやすい場所になる。(鈴木 久)
http://www.minpo.jp/news/detail/2014091318027