■増えている9月病
新入社員や新入生などが環境の変化についていけなくなる「5月病」は、すでに一般的な言葉です。さらに最近では、「9月病」という言葉を聞く機会も増えています。9月病はもともと、夏休みが長いヨーロッパなどで休みが終わってもなかなか仕事モードに戻れない人が陥る状態を指していました。
日本では、春からのストレスがたまった上に、蒸し暑い夏に体力を消耗して心身に不調が出ることを、9月病と呼んでいます。また、まとまったとき間がある夏休みに、今の環境や将来の姿を考えて不安になることも9月病の1つのタイプでしょう。
9月病の症状としては、5月病と同じく抑うつや無気力、疲労感、不安感、焦りなどがあります。睡眠に関しては、うつ状態からくる不眠や過眠が現れます。秋の初めに寝つきが悪くなったり、朝早くから目覚めてしまったりするのは、9月病の前触れかもしれません。早めに対処して、うつ病や適応障害といった本当の病気になる前になんとかしたいものです。
■眠る前にはリラックスを
9月病での不眠の原因は、主にストレスです。その日にたまったストレスは眠る前に解消するのが原則。布団に入る前の1時間は、心から楽しめる趣味や軽めの読書、静かな音楽の鑑賞などをしましょう。ただし、いくら好きなこととはいえ、興奮したり集中し過ぎたりすることは逆効果なので注意が必要です。また、38~40度のぬるめのお風呂に20~30分入ると、心身ともにリラックスして寝つきが良くなります。
寝床についてもまだストレスを感じるようなら、世界保健機関(WHO)が勧めるリラックスするための呼吸法をしましょう。まず、3秒間カウントしながらゆっくり鼻から息を吸い、おなかを膨らませます。次に、3秒間カウントしながらゆっくり鼻から息を吐きます。息を吐き終わったら、そこで3秒間、呼吸を止めましょう。この呼吸を5分間、繰り返して、最後に息を吐きながら「リラックス」と自分に言い聞かせてください。
■悩むより考えて問題を解決
悩むというのは、答えが出ないことを堂々巡りで思いわずらうことです。それよりも、問題の枠組みを考えて、目覚めたときに答えが出ている追想法(レミニセンス)を試してみませんか? 発明王のエジソンやノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士も、追想法を行って多くの問題を解決していました。
まず、枕元にメモ帳を用意します。寝床に入ったら、今、問題になっていることの枠組みを考えて、どのように解決したいかをはっきりさせます。それだけで、眠っている間に記憶が整理され、新しいアイデアが浮かびやすくなります。目覚めたときに浮かんだアイデアは、忘れないうちにメモしておきましょう。
■休日は寝過ぎない・夜更かししない
本当は毎日、睡眠不足にならないように睡眠時間を確保できればよいのですが、難しいのが現実です。そのため、1週間単位で睡眠時間を調整する必要があります。平日には仕事や勉強があるので、睡眠時間は短くなりがちです。かわりに休日は長めに眠って、睡眠不足を解消しましょう。
とはいえ、休日に眠りすぎると逆効果です。平日の睡眠不足をとり戻そうとして、いつまでも布団の中にいても、質の悪い睡眠が続くだけで疲労が回復しません。睡眠と覚醒は振り子のようなものなので、ダラダラ眠っていては目覚めてからも頭がスキッとせず、充実した休日を過ごせないのです。
休日でも、平日の起床時刻+2時間以内に寝床を出ましょう。いったん起きて活動しても眠気が強ければ、仮眠や昼寝をとり、夜は平日よりも少し早めに眠りましょう。睡眠のリズムは早い時間へはずらしにくいので、休日に夜更かしや朝寝坊をしていると、月曜日の朝がとてもつらくなります。
■トリプトファンでうつ気分を追い払う
最近、もっとも使われている抗うつ薬には、脳内のセロトニンという物質を増やす働きがあります。脳のセロトニン神経は気持ちを穏やかに保ち、うつ気分に落ち込んだり、逆にキレたりしないようにしてくれます。9月病ではセロトニンが不足するため、セロトニンの原料となるトリプトファンをなるべくとりましょう。
トリプトファンは、ヒトの体内で作れない必須アミノ酸の一つです。ただし、これをサプリメントでとると健康被害を起こすことがあるので要注意です。トリプトファンは牛乳や乳製品、豆・豆製品、バナナ、アボカド、肉類、スジコ、タラコに比較的多く含まれているので、これらから摂るようにしましょう。朝食をとる習慣がない人は、バナナと牛乳から始めるのがお勧めです。
おもしろいことに、目を覚ましてくれるセロトニンは、夕方から夜になると睡眠ホルモン・メラトニンに変わります。朝食にトリプトファンを多くとると、グッスリ眠れて目覚めが良くなり、日中の気分も落ち着くので、一石二鳥といえます。
坪田 聡
http://news.goo.ne.jp/article/allabout/life/allabout-5308.html