「インターネット上の広告を見て興味を持ち、海外業者とバイナリーオプション取引を開始したが、出金を求めても応じてもらえない」といった相談が、最近になって全国の消費生活センター等に数多く寄せられています。
バイナリーオプション取引とは、為替相場等が上がるか下がるかを予想するもので、取引期間終了時(権利行使期限)に事前に定めた権利行使価格を上回った(または下回った)場合に、一定額の金銭(ペイアウト)を受け取ることができる取引です。予想がはずれれば、支払ったオプション料がすべて損失になりますが、短期間に繰り返し取引することができるため、損失額が大きくなるおそれがあります。
トラブルになっている事例における相手方業者の所在地は海外にあります。日本の法律(金融商品取引法)では、日本の顧客との間で、バイナリーオプション取引などの店頭デリバティブ取引を業として行う場合は、海外業者も含め、金融商品取引業の登録が必要となりますが、これらの事例ではいずれも業者の登録は確認できていません。(注1)
バイナリーオプション取引はリスクの高い取引であることを理解し、無登録の業者との契約は行わないようにしましょう。
- (注1)原資産が商品の場合は商品先物取引法が適用される。
PIO-NET(注2)における相談件数
バイナリーオプション取引に関する相談は、2014年1月以降398件寄せられており、6月以降急増しています。
図 バイナリーオプション取引に関する相談件数
(2014年1月以降受付、2014年8月29日までのPIO-NET登録分)
1月の相談件数は5件、2月は2件、3月は1件、4月は8件、5月は15件、6月は51件、7月は178件、8月は138件です。
- (注2) PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのこと。
相談内容
- 【事例1】
- 無料掲示板で「100万円ぐらいなら稼ぎ方教えます」という書き込みを見て、その書き込みをした女性に連絡をした。すると、その女性から連絡があり「いくら稼ぎたいか」と聞かれたので「70万円」と答えると、「私は今まで8,000万円ほど稼いでいるので簡単に稼げますよ」と言われた。その後、海外業者のサイトのアドレスが記載されたメールが送られてきたので、すぐに記載されたアドレスにアクセスして、氏名や生年月日、クレジットカード番号を入力し、サイト内のバイナリーオプション取引口座を開設した。最初に1万円を入金して取引を開始した。
しかし、すぐに残金がなくなったため決済を繰り返したが、もうけることはできなかった。その後もお金を取り戻そうと取引を繰り返したが、残金がわずかになり不安になった。これまでの投資総額約50万円を返してほしい。 - (2014年6月受付 20歳代 男性)
- 【事例2】
- ネットに「簡単に誰でももうかる」と書かれていたので、興味を持ち海外のバイナリーオプションのサイトに連絡した。サイトから電話が入り、担当者から「投資金額に応じて、サイトが同じ金額をプレゼントする」と言われた。10万円入れたら20万円分取引ができるので、元金がなくなる前に止めれば損はしないと思い、クレジット一括払いでバイナリーオプション取引に10万円投資した。
ところが、途中で止めようと思い電話すると、「600万円分の取引をしないと解約できない」と言われた。とてもそんな取引はできないので「解約する」と言うと、解約担当に電話するよう言われた。解約担当に電話をすると、「解約には、免許証、公共料金の領収書、クレジットカードの両面を写真に撮って送るように」と言われ、言われるままに送ってしまった。その後は解約担当に電話してもつながらず、だまされたと思った。どうしても10万円取り返したい。クレジット会社に電話すると、「請求を止めることはできない」と言われた。どうしたらよいか。 - (2014年8月受付 40歳代 女性)
- 【事例3】
- SNSで「もうかる」との記載を見て、海外業者とFX(外国為替証拠金取引)のような取引をした。代金はクレジットカードで支払った。円相場が高くなるか低くなるかを予想するバイナリーオプション取引で、業者のホームページ上に円の相場状況が示される。しかし、リアルタイムの情報ではないようで不審だった。業者のホームページに作った自分の口座からお金を引き出したいと依頼したが、払ってくれない。業者の電話番号、住所は不明だ。その後、業者は無登録業者(注3)で、財務局から警告書(注4)が出ていることが判明した。解約したい。
- (2014年8月受付 30歳代 男性)
- (注3) 海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録が必要である。登録を受けずに金融商品取引業を行うことは禁止されている(金融庁ホームページ「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」、関東財務局ホームページ「海外に所在する無登録業者とのFX取引等にご注意ください!」参照)。
- (注4) 無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を公表している(金融庁ホームページ「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」参照)。
消費者へのアドバイス
- バイナリーオプション取引は、為替相場等が上がるか下がるかを予想するもので、一見すると簡単な取引に見えますが、リスクの高い取引であることをよく理解しましょう。短期間に繰り返し取引した場合、損失額が大きくなるおそれがあります。
- トラブルになっているのは、海外業者とのバイナリーオプション取引で、いずれの業者も金融商品取引業の登録は確認できていません。契約する前に、業者の登録の有無を確認し、無登録の業者との契約は行わないようにしましょう。業者が登録されているかどうかは、金融庁ホームページ「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認することができます。
- 「絶対にもうかる」「簡単にもうかる」といったセールストークをうのみにしないようにしましょう。
- トラブルにあったら消費生活センター等に相談しましょう。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140904_1.html