ハリウッド女優のA・ジョリーさんが、乳がんのリスクを減らすために乳房を切除する手術を受け、話題となりました。彼女が決断に至ったきっかけは「遺伝子検査」。今、急速に私たちの身近に広がり、さまざまな分野で活用され始めています。
大きな成果が出ているのは、医療現場。日本でもジョリーさんと同じように、遺伝子を調べることで乳がんや卵巣がんの発症確率を明らかにし、発症前に切除する医療が始まっています。肺がんでは、原因遺伝子の特定で開発された新薬によって、服用した患者の9割が回復するなど、医療は今まさに大きく変わりつつあります。
遺伝子検査の広がりは、医療現場にとどまりません。インターネットで誰でも購入できる遺伝子検査キットには、生活習慣病のリスクや体質を判定するものから、潜在的な才能を予測するものまで、さまざまなものがあります。“生まれ持った設計図”とも言われる遺伝子を調べることによって、どこまで自分の将来を知ることができるのか。遺伝子検査について徹底的にお伝えしました。
■遺伝子検査が私たちの暮らしを変える
瞳の色を決める遺伝子、睡眠などの体内時計をコントロールする遺伝子、糖尿病の発症に関わる遺伝子など、今わかっているだけで、遺伝子は2万数千種類あります。
こうした遺伝子を簡単に調べられるようになり、私たちの暮らしが大きく変わろうとしています。番組では、その大きな変化を以下4つのテーマでお伝えしました。
■乳がん・卵巣がんの予防に生かす
BRCA1、BRCA2という遺伝子に変異があると、遺伝性乳がん・卵巣がんの発症リスクが高まります。
この遺伝性乳がん・卵巣がんの発症リスクを調べる遺伝子検査は、保険適用されていませんので、およそ20万円の自己負担が発生します。
【70歳までに発症するリスク】
乳がん
・通常:8%
・遺伝子変異:最大87%
卵巣がん
・通常:1%未満
・遺伝子に変異:最大44%
遺伝性乳がん・卵巣がんが疑われるケースは以下の通りです。もし1つでも当てはまる場合は、専門家に相談したほうがいいと言われています。
【もしかして遺伝性乳がん・卵巣がん?】
本人を含めた親族に・・・
・40歳未満で乳がんを発症した人がいる
・乳がん発症者が3人以上いる
・男性で乳がんになった人がいる
・卵巣がんの人がいる
など
チェックリスト
より詳しいチェックリストは、HBOCネットのホームページに掲載されています。
「HBOCネット」
■遺伝子検査や遺伝カウンセリングを受けられる施設
「全国遺伝子医療部門連絡会議」のホームページから検索できます。
遺伝性乳がん・卵巣がんの遺伝子検査を受けて、もし遺伝子に変異があると分かった場合、
・25歳以上からこまめに検診を受けるなどの【早期発見】
・発症する前に乳房と卵巣を【予防的切除】
という二つの対処があります。詳しくは主治医や専門医にご相談下さい。
【予防的切除】を行なう医療施設
乳がんの場合「聖路加国際病院」
卵巣がんの場合「昭和大学」「がん研究会有明病院」「慶應義塾大学」
■がん・難病治療に革命
番組では、ALK(アルク)という遺伝子に変異が起きることで発症する肺がんに対する治療について、ご紹介しました。このタイプの肺がんは、肺がん全体のおよそ3.5%ほどです。
がん細胞の遺伝子を調べる遺伝子検査を行ない、ALK遺伝子の変異が確認された場合に、抗がん剤が処方されます。詳しくは、主治医にご相談下さい。
アメリカ・ウィスコンシン州にあるウィスコンシン子供病院に行なわれている、遺伝子解析による難病治療については、病院のホームページをご参照ください。
「Children’s Hospital of Wisconsin」
番組およびこのページは特定の製品・店舗を推奨するものではありません。
製品・サービスの特性や使用上の制限、契約内容・条件などについては、各自におかれまして、メーカーや販売会社に十分ご確認ください。
NHK「あさイチ」2013年7月31日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/asaichi/life/asaichi-20130731-a-001.html