不妊治療では、原因が男性と女性のどちらにあっても、女性にかかる心身の負担が大きくなる。また女性の不妊治療に関わる大きな“2つの壁”についてお伝えする。
1.不妊治療の“2つの壁”
不妊症は、治療技術の進歩により、かつては妊娠が難しかったケースでも、妊娠・出産が望めるようになってきました。しかし、妊娠・出産できる年齢には限りがあり、特に不妊治療においては大きく影響します。30代後半を過ぎると、卵子の数が減ったり、質が低下したりして、妊娠しにくくなります。また、加齢に伴い、子宮筋腫や子宮内膜症など不妊の原因となる病気が増えることも、妊娠しにくくなる要因です。また、妊娠しても、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など、出産に影響する合併症を起こすリスクも高くなります。このように、加齢が1つの“壁”となります。
2つ目の“壁”は、不妊治療にかかる時間です。検査自体にも、また原因となる病気の治療や高度な不妊治療を行う際にも、多くの時間がかかります。不妊治療では、原因が男性と女性のどちらにある場合でも、女性にかかる負担が大きくなります。2つの壁が女性の心身に大きな負担をかけることをよく考え、治療を検討しましょう。
2.人工授精や高度な不妊治療を望む場合
タイミングの見直しや薬物療法などの一般的な不妊治療で効果が得られなかった場合や、できるだけ早く妊娠・出産を望む場合は、人工授精や高度な不妊治療を検討します。人工授精とは、予測した排卵日に合わせて精液を採取し、精子を子宮内に人工的に注入する方法です。人工授精を数回行っても妊娠しない場合には、体外受精や顕微授精を検討します。体外受精とは、卵子と精子を取り出して自然受精させ、受精卵が胚になった段階で子宮に移植する方法です。顕微授精とは、精液の中から精子を1つ選び、取り出した卵子の中に顕微鏡を見ながら注入して受精卵をつくり、胚に育った段階で子宮に移植する方法です。
いずれも健康保険が適用されないため、費用は自己負担です。金額は医療機関によって異なり、人工授精は1回1~3万円程度、体外受精と顕微授精は1回数十万円程度かかります。体外受精と顕微授精には「特定不妊治療費助成制度」が設けられているので、各自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
☆詳しい検査の方法、治療の進め方などについては、
きょうの健康テキスト 5月号に詳しく掲載されています。
NHK「きょうの健康」2014年5月21日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140521-h-001.html