去年、厚労省の研究チームが初めて発表した「正常でも認知症でもない、中間にいる状態の高齢者」は、全国に400万人。こうした人々は「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれますが、今、医療界ではMCIの人を早期に見つけて発症予防のために手を打とうという試みが始まっています。
鳥取県琴浦町(ちょう)ではおよそ3分でMCIを判定するタッチパネル式の検査機を導入。MCIの疑いのある人に認知症予防の教室へ参加してもらい、成果を挙げています。さらに、早期発見とともに重要な予防策についても、計算などの脳を使う活動と有酸素運動を同時に行うことで記憶力の改善が期待できる「デュアルタスク」といった手段など、研究が進んでいます。番組では、最新情報をもとに認知症とどう向き合えばいいのか、その方策を探ります。
■MCI(軽度認知障害)とは
MCI(軽度認知障害)年齢のせいだけではない要注意のもの忘れがあるものの、認知症とまではいえない、正常と認知症の中間の状態をさします。一般の人よりも認知症になるリスクは高く、海外では1年間におよそ5~10%が認知症を発症したという報告もあります。ただし、全員が必ずしも認知症になるわけではなく、正常に回復することもあります。
■MCIに気づくきっかけ
認知症専門医の奥村歩さんがまとめた本人や家族がMCIに気づいたきっかけは以下のとおりです。
・1位 同じことを何度も言ったり聞いたりする
・2位 人と会う約束をしたことを忘れる
・3位 最近の印象的な出来事を覚えていない
・4位 電話で聴いたことを家族に伝達できない
・5位 大切な物をなくしたり置き忘れたりする
・6位 薬の管理ができなくなった
奥村さんは1、2回のみならば問題ないのですが、これらの症状が半年程度続いたり、悪化したりするようなら「もの忘れ外来」や精神科、神経内科などで認知症の専門医に相談してほしいといいます。
■デュアルタスクの研究について
国立長寿医療研究センターではMCIの段階から認知症予防を目指す研究が進められています。それは運動しながら頭を使う、つまり2つの課題を同時に行うデュアルタスクです。引き算をしながらウォーキングをしたり、しりとりをしながら踏み台昇降をしたり、デュアルタスクの運動を1年間行ったグループは行わなかったグループに比べ記憶力が向上しました。さらに現在、より親しみやすくするため、ダンスを使ったプログラムも開発しています。ダンスは新しい動きを覚え、それを思い出して体を動かし、音楽や相手の動きに合わせて踊るというマルチタスクの要素が含まれており、認知症の高い予防効果が、期待されています。
島田さんオススメ!“認知症予防”
日常で出来る認知症予防の工夫
・歩幅を5センチ増やして歩くよう心がける
やや強い有酸素運動にすることで、脳の神経細胞を成長させる物質が増えると期待されます。
・2日前の日記をつける
認知症で衰えるエピソード記憶(出来事を記憶する能力)を鍛えられると期待されます。
■MCIと診断されたら家族が気をつけるポイント
認知症専門医の奥村歩さんはMCIと診断された本人と家族に、今後の生活で気をつけて欲しいことを伝えています。その頭文字が「く・く・か・か」です。
「く」・・・薬 飲み忘れや飲み過ぎを防ぐため、必要な分をカレンダーに貼るなどの工夫が有効です。
「く」・・・車 症状が進むと運転に必要な判断力が低下します。運転をやめさせることも必要です。
「か」・・・お金 さまざまな詐欺に合わないよう、気を配ることが大切です。
「か」・・・火事 たばこやコンロの消し忘れに要注意。時には禁煙をすすめることも必要です。
■街ぐるみで認知症予防に取り組む琴浦町
鳥取県琴浦町は10年前から高齢者の認知症予防の取り組みを行ってきました。3分でMCIのリスクを調べる検査機を導入し、リスクのある人には認知症予防のための教室に参加を促します。そこでは体を動かすこと、頭を使う課題を行うこと、仲間と楽しく会話をすること、そして水分摂取も重要視しています。
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NHK「あさイチ」2014年5月12日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/asaichi/life/asaichi-20140512-a-001.html