不妊治療には大きく分けて、「検査」「タイミング療法」「人工授精」 「体外授精」 の4つのSTEPがあります。このうち健康保険が適応されるのはSTEP1の「検査」とSTEP2の「タイミング療法」までです。
これ以降のSTEPについては現在のところ保険適応がないため、自費になります。医療機関の言葉でいえば「自由診療」となるため、医療機関によってその費用はまちまちです。
ここでは、おおよその目安についてみてみます。
まず、STEP1の「検査」とSTEP2のタイミング療法では、ほとんどの場合で健康保険が適応されます。加入している健康保険組合や収入によっても多少の違いはありますが、一般的には3割負担、高額になっても高額療養費制度の対象となりますので、1ヶ月にかかる金額は最大で9万円程度です。
では次のSTEP3「人工授精」はどうでしょうか。
人工授精は1回につき、およそ15,000円程度かかります。1回で妊娠が成立することは少ないため、一般的には数回繰り返すことになります。仮に5回のトライをすれば、15,000円×5回=75,000円程度です。
最後のSTEP4「体外受精」はもっと複雑です。体外受精を1回行うと、およそ20~30万円かかります。
精子の状態によっては顕微鏡授精が必要となりますので、その場合はもう少し高額で、30~50万円程度かかるようです。
さらに精液内の精子が少ない場合は、精巣から精子を取り出す「精巣内精子回収法(TESE)」が必要になり、これにはおよそ3~5万程度かかります。
また着床率を上げるために受精卵をある程度まで培養液の中で育ててから着床させる「胚盤胞培養」を行う場合、3~10万円程度がかかります。
さらに受精卵を凍結保存してある程度の期間(1年間とか)が過ぎてから体外受精を行う場合は、15万円程度が追加されます。
不妊治療には非常に多くのお金が必要となる現実をふまえ、特定の不妊治療に限り、という条件はつきますが、厚生労働省と各地方自治体(都道府県単位、あるいは市区町村単位)が共同で、不妊治療に対する助成金制度を行っています。
【対象者】
特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦(事実婚は対象外)
【対象となる治療】
体外受精及び顕微授精
【給付の内容】
1回の治療につき15万円まで(平成25年度から、凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円まで)、1年度目は年3回まで、2年度目以降年2回を限度に通算5年、通算10回を超えないこと。
【所得制限】
1年間に730万円(夫婦合算の所得ベース)以下の場合
※夫婦のすべての所得額から必要経費(給与所得控除額)及び諸控除額を差し引いた額、とされています
助成制度は厚生労働省が定めるものですが、実際の窓口は都道府県や市区町村です。
内容についてですが、凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円までとい
う制限があります。分かりやすくいえば以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施した場合です。
2004年にスタートした助成制度ですが、実際の支給件数は2010年までに5倍に増え、2011年の助成額はおよそ200億円を超えました。
女性のキャリアアップや晩婚化が進む現在、助成額はさらに増えることが予測されることもあり、助成額の減額が図られています。
さらにもう1つの側面として、39歳までという年齢制限が設けられました。
厚生労働省のとある研究班が行った、平成24年までの3年間に不妊治療を受けた女性の年齢を元にした分析結果(報告書)では、妊娠成功の確立は32歳まではほぼ20%(横ばい)、36歳ごろから急に下がり始め、40歳では10%を切り、45歳では1%にも満たない、という結果になりました。
その一方で流産の割合は年齢とともに上がり、40歳を過ぎると35%以上になります。つまり、「年齢制限を設けるのであれば、有効性・安全性などを考慮し、39歳以下とするのが望ましい」という内容に変更されたのです。