「咳が出たり、のどが痛くなったりします。職場のタバコの煙が原因でしょうか?」というご相談を受けました。いわゆる副流煙による受動喫煙症の疑いがあるのですが、「受動喫煙による健康被害」を証明することは可能でしょうか? 日本禁煙学会による受動喫煙症診断基準を参考にして、簡単にまとめてみました。
■受動喫煙による多様な症状
タバコを吸わない人にとって、煙は非常に気になるもの。特に女性のほうが敏感だと言われています。いずれにしても、タバコの煙を間接的に吸い込むことによって、さまざまな症状が出現することがあります。職場や家庭でも気になった経験があるのではないでしょうか。代表的な症状は次のようなものです。
・咽喉(のど)がいがらっぽい
・鼻につく
・目の痛み
・頭痛
・イライラする
実際には他にもいろいろな症状が出現することもありますが、ここでポイントとなるのが、それらの症状が本当にタバコの副流煙によるものか、ということです。風邪をひくだけでも同じような症状が起こることもありますので、受動喫煙の影響と証明するためには状況を総合的に考える必要があります。
■副流煙の影響を証明する方法
受動喫煙の影響である場合、急性症状が存在する(した)ということがほとんどです。前項のような症状があったとき、次のような状況はありませんでしたか?
1. タバコの煙にさらされてから(もしくは煙の量が増えてから)症状が出現した
2. タバコの煙がなくなれば症状も改善し、煙のない状況であればこうした症状が出現しない
3. タバコの煙以外の有害物質に接していない(気道粘膜に影響を与える物質・刺激物など)
こうした3つのポイントがあてはまり、更に同じ状況を繰り返す場合には受動喫煙症である可能性が高くなります。
ところが自分自身は喫煙をしないのに、慢性化、つまり慣れてしまっているということもあります。こうした場合、自身の症状に気づかないままに健康へ影響が及んでいることがあります。たとえば、配偶者の喫煙によっても肺がんの危険性が高まることが指摘されています。
■ニコチンは体内で「コチニン」に変化する
タバコを習慣化(依存症を形成)してしまう物質としてニコチンがよく知られていますが、体内に入ったニコチンは代謝を受けて、コチニンという物質に変化します。このコチニンは尿中に排出されますので、受動喫煙の影響が強い場合には、タバコの煙の影響を受けてから24時間以内に尿中コチニンを検査することで受動喫煙症の診断につながることがあります。
ただし、検査の精度には限界があります。尿中コチニンが検出されなかった場合、それだけで受動喫煙症ではないと言い切ることはできませんので、1つの参考所見としてお考えください。また、尿中コチニンの測定は現在のところ保険適応とはなっておらず、自費検査の場合には15,000円以上かかってしまうこともあります(検査日数も2~3週間ぐらいかかります)。
■成人喫煙率≠(ノットイコール)家庭喫煙率
成人喫煙率は年々低下しており、現在は4人に1人以下だそうですが、職種に関わらず勤務する病院の職員全員に「タバコに関するアンケート調査」を行ったところ(回答数126)、現在もタバコを吸っているという回答は23.8%でした。ところが、「同居する家族で1人でもタバコを吸っている人がいる」という回答は56.5%と非常に高い割合でした。地域性にもよるのでしょうが、2つの家庭のうち1つ以上で、今日もタバコの煙が漂っているということになります。つまり、大勢の方が副流煙にさらされる環境にいるということです。
もし職場の副流煙などで切実に悩まれている場合は、検査費を支払っても検査するだけの意義がありますので、職場の産業医や嘱託医、もしくは日本禁煙学会会員の先生方にご相談ください。
文・All About 編集部(All About タバコ・禁煙)
All About 編集部
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