記憶に重要な役割を果たす脳の海馬のうち、情報の入り口にあたる部位で、新しい神経細胞が増えれば古い記憶の忘却が進むことを確認したと、藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)の宮川剛教授(神経科学)らとカナダ・トロント大学の共同研究グループが発表した。
研究成果は9日に米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載された。
発表によると、実験でマウスに電気ショックを与えた後、薬物投与や運動で新しい神経細胞ができるようにしたところ、電気ショックを思い出して身動きをしなくなる「すくみ反応」が短くなった。海馬の情報の入り口にあたる部位で若い頃に盛んに生まれる神経細胞は、新しい記憶の形成に重要とされる一方、古い記憶を忘れることも促進していることがわかった。
宮川教授は、乳幼児の頃の出来事をほとんど覚えていない「幼児期健忘」のメカニズムの解明が進むとともに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)で、障害の元となった体験の記憶を薄れさせて治療につなげることなども期待できるとしている。
生理学研究所の鍋倉淳一副所長(神経生理学)は「幼児期健忘を全く新しい視点で説明した興味深い研究だ」と話している。
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