世界文化遺産登録が確実になった群馬県の富岡製糸場。群馬には世界遺産どころか国宝もない。大沢正明知事は「県民の誇り」と大喜びで、関係者も観光収入アップに期待を膨らませているが、そう期待通りにはいかないかもしれない。世界遺産バブルは、しょせん一過性だからだ。
たとえば、07年7月に世界文化遺産に登録された島根県の石見銀山。
「登録前の観光客数は年30万~40万人で、登録された07年は70万人、08年は80万人と2倍に増えてウハウハでしたが、やはり日本人は飽きっぽいんです。その後は右肩下がりで、今は40万~50万人と、バブルははじけています」(同県関係者)
文字通りぬか喜びだったわけ。11年6月に同じく世界文化遺産に登録された岩手県の平泉も状況は似ている。
「東日本大震災の影響で平泉は観光客が激減したんですが、世界遺産登録で持ち直しました。10年前まで170万人弱だったのが、登録の翌年には250万人超。それだって、20年前の水準に戻っただけです。外国人観光客に至っては、震災前の水準を割り込んでいる。もろ手を挙げて、とはいきません」(同町関係者)
■改修費100億円の工面
富岡製糸場はどうかといえば、昨年度の観光客数が約31万人と、初めて30万人の大台に乗った。地元のシンクタンクは、世界遺産登録で2.4倍増の74万人、経済効果は年間34億円とソロバンをはじいている。27日早速、製糸場の見学者数が過去最高を記録したが、混雑に対応しきれていなかった。
「製糸場の近くは道幅が狭い道路が多く、駐車場もすぐに満車になるなど数が足りていない。そのインフラ整備にもお金がかかるし、そもそも、建物自体の老朽化という問題も残っている。富岡市は今後30年間で100億円をかけて改修するそうですが、どうやって費用をひねり出すか、メドが立っていません。観光収入増を当て込み、あれこれ手をつけ始めた途端にバブルがはじける恐れもあります」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)
まさに“捕らぬたぬきの皮算用”に終わる可能性があるのだ。
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