(乳製品を隠し味に使ってみては?)
母親が自分の息子の入学式を優先し、有給休暇を使って勤め先の学校の入学式を欠席したニュースについて、私のブログへのコメントは母親に「辛口」でした。メンタルトレーニングに欠けているといったコメントもあったと思われますが、話を母親に絞りますと、母親であることの中に「毎日料理をつくる」という仕事にも、メンタルトレーニングが必要です。
結婚したら夫のために料理を作る。
これは夫には良いでしょうが、妻には大変なことです。新婚ムードのうちはいいかもしれませんが、夫のために30年間お弁当を毎朝作った方などがテレビに出ていらっしゃると、私にはもうそれだけで尊敬の対象になっています。
最近、元テレビ局のアナウンサーで、結婚式にも出席させていただいたことがある女性と久しぶりに対談をしました。「最後はクイズ番組だった? あれから何年になるかしらね?」なんてしばらく思い出話をしていましたが、出産も終え、1児の母に。しかし今も、メディアの仕事から大学の講師までやっておられます。
料理については、「やっぱり毎日はイヤだわ~」と。その通りだと私も思いました。子どもは、成長を見守るという楽しみがありますし、なによりも「お母さんがご飯を作ってくれる」といううれしそうな、かわいい顔を見せてくれることもあります。が、ご飯が出てきて当たり前という顔を夫にされるのは、気持ちのいいものではありません。
ところがです。夫には夫の言い分というのがあって、自分が食べたいと思うものが出てこなくても、作ってもらったんだから、がまんして食べるというメンタルトレーニングも必要なんだと、カウンセリングで訴えられることもあります。
これも分かります。毎日、同じ料理が続く忘年会や歓迎会の居酒屋料理に飽きて、家でさっぱりした物を妻が作ってくれることを期待していたが、鶏のから揚げを出され、がまんして食べたという世の既婚男性もいます。
高齢者になりますと、夫がいつも家にいて、ご飯が出てくるのを待っているのがたまらなくイヤだとおっしゃる妻や、夕方出かけようとすると夫がいて「気にしなくていいから」とビールを飲みながら言われても、出かけにくい気分になるのがイヤだと。夫の定年退職後に今まで気がねなく出かけていたことが出来なくなったストレスで、心療内科の診察が必要になるほど身体的影響がでてくる場合もあります。
私は常々、料理は自分のために今食べたいものを手軽に作ることが、一番楽しくて、おいしいと言っています。料理の習慣とメンタルトレーニングが幸せになるためには必要。料理は、認知症予防としても例に挙げられるぐらい、頭をつかい、運動も知らないうちにやっているのです。わざわざジムにいかなくても、料理をすればいい。
この慌ただしくて、不規則な世の中で、外食が増えるのは仕方ないことです。料理は自分の健康のために、自分が食べるために作る時代になったのではないか。もはや母親が作らなければいけないものでもないと思います。
その元アナウンサーの方が「なにか牛乳かヨーグルトをつかってストレスにいい料理はありません?」とお聞きになるので、もしかしたら乳製品が余って仕方ない生活をしていらっしゃるのかなと思いました。
牛乳を使いこなすには、それだけを飲まず、ちょこちょこと隠し味に使うことです。調味料のように使う。みそ汁に少量入れるなどは、使い方の入り口としてはいいでしょうし、ストレスに負けない体を作る朝食というところで、私の知っている心療内科の先生たちがおすすめしているのは、ポーチドエッグのチーズソースです。バター、小麦粉、牛乳、大根、チーズでルウを作り、お酢をちょっと入れ、沸騰したお湯で卵をゆでて、ついでにホウレンソウもゆでて、全部一緒にお皿に盛りつけるだけ。これだけでも面倒くさいとおっしゃる男性がいますが、最近は若い男性の方が、小まめに自分のために料理をされるようです。これは簡単で人気があります。細かい塩、こしょうの味付けやルウの軟らかさなどは、人それぞれでいいのです。
カレーを作るときに、ヨーグルト、牛乳、しょうが、にんにく、トマトの缶詰、トマトケチャップにオイスターソースなどを入れて煮るのは、イライラを鎮めるカルシウムを上手にとる方法として紹介されていますし、カレー粉をみそ汁にちょっと入れる人もいます。朝からカレーを食べる方も増えました。
いずれにしても、おおげさな料理ではありません。食材を片付けていく工夫のようなものです。そういうところでも頭の回転は必要ですし、味見というのも味覚チェックになります。キャベツを買ったらほとんど腐らせてしまうとか、ワカメも冷蔵庫で固まっているとか聞きますが、赤みそとはちみつ、梅干しの果肉と煎りごまを混ぜてドレッシングを作り、水切りをしたキャベツの千切りに、このドレッシングをかけて食べると、胃腸が弱っているときにいい。ヨーグルトとゆでたワカメを混ぜて充分冷蔵庫で冷やしてからレモンをかけてワインと一緒に食べると気分がスッキリして、ビタミン補給にもなる――などは、試してみる勇気も必要かもしれません。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=97296