新入生や新社会人を始め、新生活を始める人が多い4月。ゴールデンウィークが終わり新緑が輝く季節になると、なぜかだるさや倦怠感などのいわゆる「五月病」の症状を感じる人が増えてきます。早くも夏休みが待ち遠しく、ふとおヘソの辺りをつまんでみると……?
「ヤバイ……」と、ショックを受ける人が、少なからずいるでしょう。気がつかないうちに体重増加。明日からは運動しようと、その場限りの決心をする人もいるかもしれません。
実は、体重増加は新生活に起こりがちな体の変化の一つ。新しい環境に適応するためのスタートダッシュが終わった頃、おなかのたるみや体重増加に気づく人は少なくありません。体重増加の原因は、食べ過ぎ・運動不足の二言で片付けられがちですが、実は心の状態が反映されていることも多いのです。場合によっては、体重増加が心の病気の兆候であることもあります。
体重増加の大敵でもある新生活ストレスを減少させ、賢く体重管理をするコツを解説します。
■ストレスが食欲を刺激する? 甘いものの効果と誘惑
程度の差こそあれ、新生活は大きなストレスになります。特に少し前まで学生だった新社会人は、否応なく生活の変化を強いられます。学生時代は午前に講義がない日はお昼近くまで寝ていたという人でも、働き始めたらそうはいきません。
どんなに起きるのが辛くても、朝は時間になったらしっかり起き、身だしなみを整え、出勤しなければなりません。生活リズムの変化だけでも大きな負担になるのに加え、会社でも覚えなければならないことが山積み。新社会人にとっての新生活は相当なストレスになることが多いのです。
ただ、ストレスの影響は個人差が大きいもの。ある人にとっては何でもない変化でも、ある人はすっかり気疲れしてしまうこともあります。疲れやストレスからつい甘いものを口に入れる習慣が付いてしまい、間食しないと生活が成り立たなくなってしまう人もいます。
甘いものは脳内で快楽物質エンドルフィンを分泌させ、疲れを取ってくれると同時に、血糖値を上げて脳のエネルギー源となるブドウ糖を供給し、頭の働きをシャープにしてくれます。ただ、甘いものに限らず、人は快楽に弱いもの。特に気分が冴えない時は、快楽の誘惑に抵抗するのは難しいもので、効果が一時的なものでもつい食べすぎになりがちです。
■体重が急変動したら、考えるべき心の病気
もっとも、体重が増えてしまったからといっても一概に悪いことではありません。そもそも、学生時代に美容やダイエットに力を入れた人が、ずっと体脂肪率1桁をキープしていくのが、健康的なことかどうかも疑問です。
ただ体重が急変した場合は、自分で自覚している以上に心に問題を抱えている可能性があります。たとえば摂食コントロールが利かなくなって、カロリーを摂りすぎてしまったのかもしれませんし、気分が冴えなくてそれまで楽しんでいた活動をする気が湧かず、消費カロリーが大きく減少してしまったのかもしれません。
こうした場合、過食症、うつ病など、心の病気の可能性も考慮したいものです。もしも、「死にたい気持ち」が生じているようなら、うつ病が重症化していると考えられるので、すぐに神経科(精神科)を受診すべきです。また、自覚のある過食行動をしてしまう場合も、衝動食いの後で吐き出す習慣ができているようなら、そのまま過食症に移行しないよう、精神科受診を考慮してみてください。
■健康的ダイエットの第一歩! 睡眠と食事から始める心のケア
新生活の始まりは、目が回るような忙しさがつきもの。充分な睡眠は取れています? 睡眠は心身の疲れを取るのに大切なのはもちろん、睡眠時間を削って起きている時間が長くなるほど、食べ物が口に入る時間も増えてしまうものです。寝る間もないほど忙しく間食が増えていたという人は、ある程度生活が落ち着いたところで、まず睡眠時間を充分確保するようにしましょう。
また、食事は量が充分でも、栄養のバランスは摂れていることが大切。ビタミン、ミネラル類の不足は、ストレスへの抵抗力を弱めます。もしも、「果物は嫌い」など、好き嫌いがある人は、サプリメントでビタミン類を補給する事も考慮しましょう。また、アジ、サバなど、青魚に含まれる成分(DHAなど)には抗うつ効果があり、青魚の摂取が多いアイスランドでは冬季うつ病の罹患率が低いことも知られています。青魚にアレルギーのない方は、食事のラインナップに加えてみるのもよさそうです。
もっとも、近年は環境問題もあり、食物連鎖による水銀などの蓄積の可能性が問題視されることがあります。念のため、食物連鎖の上位にあるマグロのような大型魚を毎日食べることや、同じ海域で獲れた魚だけを食べるのも避けた方が無難でしょう。
■ストレスによる不要な食欲を摘み取る方法
最後に、体重増加の芽を摘み取るための、心のケア方法をリストにまとめます。
□1. 充分な睡眠時間を確保する
□2. 栄養バランスの取れた食事を取る(抗うつ効果のある青魚がおすすめ。場合によってはビタミン類のサプリメントも考慮)
□3. スケジュールを埋め尽くさない
□4. 家族、友人と過ごす時間を犠牲にしない
□5. 定期的な有酸素運動を行う(体に無理の無い範囲内での運動はストレス解消に役立ちます)
□6. ストレスはなるべく、その日のうちに発散させる
□7. 心の病気には目を光らせる
以上の心のケアを無理なく取り入れて、不要な体重増加の芽を上手に摘み取るようにしましょう。夏にプールサイドを歩けば、思わず人が振り向く体型に戻せるか……は神のみぞ知るですが、まずは毎日を健康的に楽しく過ごせるよう、リズムを整えていくことが大切です。
文・中嶋 泰憲(All About うつ病)
中嶋 泰憲
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140421-00000007-nallabout-hlth