とある日の夜10時。私の頭は仕事のことでいっぱいでした。記事のどこを変えたら良くなるか、既に書いた記事ももっとうまく書けたんじゃないか、といったことです。
夫と同じ部屋にいるのに、心ここにあらず。まるで遠く離れた場所いるような感覚です。こうした状態は、もう数ヶ月も続いていました。
こういったことは、これまで就いた仕事でもありました。仕事が終わっても、仕事が頭から離れないのです。どうすれば、離れてくれるのか分かりませんでした。
全力で仕事をするのは大好きです。限界まで情報を吸収して、脳がフル稼働している感覚が好きなのです。こうした仕事のやり方で、私はより自分の能力を高め、他人と違った存在になれると信じていました。しかし、実際はそうではありませんでした。
どれほどの人が、こうした働き方をしているのでしょうか? 心身が限界に達するまで自分を追い込む働き方です。そういう働き方をする人は、「成功するためには必要なこと」と思っているかもしれません。
ただ、職場でも家庭でも、誰かを犠牲にすることなく、充実感を得ることはできます。
仕事はいつも身近に存在します。スマホやPCがあるので、今や仕事はどこにいようとつきまとってきます。私はいつもこんな風に考えてしまいます。仕事で誰かが連絡してきたとき、何かの理由で返事ができなかったらどうしよう。相手はきっと、私の仕事ぶりに不満を持って、最終的にはクビになってしまうかもしれない。
24時間毎日、仕事に「対応できる」状態でありたいと焦る気持ちに反して、企業はそうした状態が社員にとってよくないものだと理解しています。Googleは、過去10年にわたって、より良い働き方を理解するという目的で、従業員の働き方について調査を行ってきました。その結果分かったことは、たった31パーセントの従業員が、仕事を職場に置いて帰宅しているということです。つまり、69パーセントの従業員は、自宅に仕事を持ち帰っていたのです。
実際には、それ以上の人が仕事と私的な生活の区別をつけられずにいます。
Googleのダブリン支社は、「Google Goes Dark」というルールを導入しました。全従業員は仕事で使用する機器を、帰宅時に職場に置いていかなければならないというものです。このルールは、私的な生活と仕事との明確な区別をつけることを目的に導入されました。
より長い時間仕事をする方が高い生産性につながるという考え方がありますが、常にそうであるとは限りません。
限界を越えた働き方はいつか破綻する
病気休暇も、長期休暇もとらず、常に「仕事ができる」状態だとします。週に70時間働き、その分の見返りをもらっているとしましょう。
The Economist誌は、OECD(経済協力開発機構)加盟国のデータを参照した結果、もっとも生産的な労働者は、職場で過ごす時間が短いグループであることを発見しました。米Lifehackerでは、さらにその考察を深めて、生産性が落ち始める労働時間は約30時間と紹介しています。
日本人と差はありますが、アメリカ人も近年はあまり休暇を使わない傾向にあります。従業員1人につき、未取得の休暇は平均して9.2日。2011年の6.2日から増加しています。
よりグローバルな視点からこの点を考察すると、OECDの生活向上指標は次のようなデータを示しています。
OECD加盟国の年間平均労働時間は1776時間であり、1日の62パーセント、つまり約15時間を自分の健康に必要なこと(睡眠、食事など)と余暇(友人や家族と過ごす、趣味、ゲーム、コンピュータやテレビの使用)などに使っている。
1日の睡眠時間が8時間だとすると、そのほか7時間は、余暇や食事に使えることになります。
すべての人の身体は、回復する時間が必要です。毎日、経験したことを処理し、回復し、整理することが必要なのです。
ニューヨークタイムズは、以下のように書いています。
人間は、集中した状態が90分続くごとに疲労を感じます。
私たちはこうした疲労を感じないようにするため、コーヒーを飲んだり、疲れを無視したりしますが、完全に身体をだますことはできません。溜まった疲れはあとで噴出し、仕事やプライベートで問題が出てきます。
身体をだまそうと試みても、あとで燃え尽きるだけなのです。
仕事と家庭生活は互いに影響を与え合う
自分の精神状態・健康状態は、共に長い時間を過ごす人々に必ず影響を及ぼします。専門家による研究でも、仕事を家庭に持ち込むことは、家族にマイナスの影響を及ぼすことが分かっています。それは同時に、家庭生活は仕事生活にポジティブな影響を与えうることも意味しています。
家族と過ごす時間、愛する人と過ごす時間は、人を生き返らせます。職場から帰宅して、家族と一緒に時間を過ごすことで、家庭全体に良い効果があることもわかっています。家族だけではなく、あなた自身もエネルギーが得られて、仕事にも良い影響を与えることになるのです。
仕事を失いたくない、怠けていると思われなくない、などといったさまざまな理由から、多くの人はこうした利点を十分に活用していません。ですが、実際にはこうした時間の使い方をすることで、職場でも家庭でも、より大きなパワーを感じることができるのです。
それでは、実際にそれをどう実行に移せばいいのでしょうか?
仕事が終わったことを、頭に理解させる
仕事を家に持ち帰ると、しばしば考えてしまうのは、未送信のEメールや明日またはその週にやるべき仕事についてです。職場を去る際、デスクをきれいにしましょう。デスクが片付いていると、頭の中も整理されます。私の尊敬する同僚であるMikael Choはこのように述べています。
物理的に雑然としている状態は、集中力を奪います。脳が意識できる対象には限りがあるからです。なので、雑然としている状態では、人は生産性が落ちます。
私は仕事を離れる前、約30分を片付けの時間に使います。物理的な物やデータを整理することで、その日の出来事を頭で整理できます。デスクを片付けることは、頭の中を片付けることでもあるのです。私は自宅で仕事をしているので、なおさらこの点は重要です。仕事場を片付けなければ、仕事から離れることができないのです。
仕事を離れるもう1つの方法は、次の日のTo-doリストを作成することです。そうすると、次の日も明確な計画と目標をもって、スタートできます。つまり、次の日にやることを整理して、実際に行動する時間を増やすのです。
やったことを書き出す
やらなければならないことばかりを考えて、実際にやったことについてはすぐに忘れてしまうことがよくあります。時間と労力をかけて成し遂げたことに誇りを感じずに、仕事をする意味があるでしょうか。毎日、To-doリストの内容を再検討する前に、その日に成し遂げたことを確認して、そのことを誇りに思ってください。
以下の写真は、私が昨日成し遂げたことです(汚い字でごめんなさい)。
とてもシンプルなことに聞こえるかもしれませんが、ほとんどの人は自分が成し遂げたことに誇りを持つことを忘れています。最初は、ちょっとバカげた行動に思えるかもしれませんが、その日の成功を素直に振り返ってみてください。自信が増し、次の日もがんばろうという気持ちが湧いてきます。
自分の時間を確保する
スケジュールを組むとき、家族と過ごす時間やある作業を行う時間を意識して作って、その時間をしっかり確保するようにしてください。こうしてスケジュールを組むと、各作業をいつ始めて、いつ終わらせるべきか意識できます。もちろん、こうしたことを実行するには意志の強さと、時間に対する責任感が必要です。
ただ小さな休暇をたまにとるだけでは十分ではありません。休暇中に働くなどというのは、論外です。「仕事」を休暇に持ち込んだとたんに、それは休暇ではなくなります。休暇を取る決断をしたら、職場の人に休暇中は自分が仕事に対応できないことを伝えましょう。その決意を貫きましょう。
毎日、仕事を離れるときも同様です。周囲の人に仕事終わりの挨拶をして、その日の仕事は終わったことを伝えましょう。これは仕事の終わりを意識できる、身体的な儀式とも言えます。明確なスケジュールを設定して、それを忠実に実行する。もし実行できなそうであれば、スケジュールを修正する。あなた自身が自分の時間を大切にできなければ、周囲の人に同様のことを期待することはできません。
常にやるべきことはあふれていますが、過剰労働はその解決策ではありません。過剰労働をしても、人生のさまざまな側面で、コントロールができなくなります。健康、人間関係、睡眠時間、そして最終的には仕事にも害が出るのです。
あなたの社員も同僚も、あなたがロボットではないと分かっています。彼らもまたロボットではありません。みな家族や友人をもち、職場以外にも責任を抱えています。自分をいたわり、ただ自分のためだけに行動してもいいのです。1日の終わりに仕事を手放すことは、あなたにもできるはずです。
Leave Work at Work: How to End Your Day|Crew blog
Andrea Ayres(訳:佐藤ゆき)
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