[ カテゴリー:医療, 生活 ]

絶好“腸”ニッポン(1)現代人を悩ませる「腸の老化」の脅威

IT関連企業に勤めるユージさん(32歳)は、通勤時に各駅停車の列車しか乗れなかった。とりわけ、仕事が忙しくイライラが募るようなときはそうだ。ひどいときは駅に停車するたびにトイレへ駆け込むというありさまだった。

だから、ユージさんはどの駅のどこにトイレがあるか、熟知している。トイレが空いてないときは改札を出て、コーヒーチェーンに飛び込むこともあった。

病院では「過敏症腸症候群」と診断され治療を受けた。医師、上司らと相談し配置替えと通勤時間のシフト制に変えてもらい、現在療養中である。

過敏性腸症候群は、その多くが不安やストレスで下痢や便秘を引き起こす腸の病気として注目されている。仕事や勉強、リストラなどがきっかけで発症することが多い。

たかがトイレと軽く済ますなかれ。「トイレが気になって通勤、通学時の満員電車に乗ることができない」「大事な会議があるのに集中できない」「外出ができず、ひいてはひきこもりとなってしまう」。同症候群は、社会生活を脅かすほどの影響がある。

ヒロユキさん(60歳)は10年前、出張先の海外のホテルで突然下血。帰国後「潰瘍(かいよう)性大腸炎」と診断された。当初は薬でやり過ごしていたがそれも限界となり、腸を大きく切除する手術を受けた。

その後、一度は人工肛門をつけるまでに至ったが、症状が改善されてそれは使っていない。ただ、ずいぶん落ち着いたものの食事を1日5回に分けてとり、そのたびにトイレに行かなければならない。必然的に、退職を余儀なくされた。いまは事務のパートで生計をたてている。

潰瘍性大腸炎は免疫機能の異常が関係して発症するといわれる難病。原因は明らかではないが、悪化の要因にはストレスが上げられている。

3年前。テルヒサさん(67歳)は、朝のトイレの後、“おしり”から出血していることに気がついた。一瞬、「痔かな?」と思ったが心配になりすぐに病院を受診。精密検査のため紹介された大学病院で「直腸がん」と診断された。幸い発見が早く、手術は無事成功。以来、好きな酒を止めるなど努めて健康に気を遣うようになった。

■「人は腸から老いる」

現代人の生活にさまざまな形で影響を及ぼしている「腸」。その重要性を指摘するのは、東京都立川市にある「松生(まついけ)クリニック」の松生恒夫院長だ。

「腸が元気でなければ抵抗力が弱まり、さまざまな病気につながります。なによりも“老化”が進みやすくなるわけで、“人は腸から老いる”とまでいわれているのです」

松生院長によれば、日本人の食生活が大きく変化した80年代以降、大腸がん、過敏性腸症候群、便秘の患者が増えた。食物繊維、ビタミン、カルシウムなどの栄養素の慢性的不足が腸の病気を起こし、脳や体の老化につながっているのだという。

さらに運動不足やストレスの増大なども、腸の老化に追い打ちをかけている。ストレスは腸の活動に影響を与えやすく、東日本大震災でも多くの被災者が便秘を患ったことがわかっている。腸には1億個以上もの神経細胞があることから「第2の脳」と呼ばれるほどデリケートな臓器なのだ。

また、便秘はそれ自体が大腸がんのリスクである。いまや大腸がんには全国で年間9万8000人が罹患し、4万3000人が命を落としている。死亡者数は、わずか半世紀で9倍に増えた。ちなみに大腸がんは40歳を過ぎるとその発生率がグンと上昇するため、中年以降になると特に要注意だ。

松生院長は、「かつて日本ではほとんどみられなかった腸の病気が増えてきたのは、食の欧米化などが一因といわれています。腸には人間の免疫システムの60%が集まっていて腸が元気な人ほど長生きする。若いときから腸の健康に気をつけてほしい」とアドバイスする。

とはいえ、腸の老化、ひいては腸の病気はなかなか実感しにくい。何らかの症状があるからといって、必ずしも明らかな病変があるとは限らないのだ。

「たとえば過敏性腸症候群と診断がついた40代のある男性は、外で下痢がガマンできずに漏らしてしまったことが受診のきっかけとなりましたが、検査ではとくに病変は見つかりませんでした」(松生院長)。実は過敏性腸症候群は内視鏡検査では異常が見つかりにくい。見た目では判断が難しく、排便の回数や状況などを総合的に考慮する必要がある。

では、絶好“腸”で毎日を過ごすためには、どうすればいいのか。そのヒントを次回以降、専門家への取材から探ってみよう。

メモ 過敏性腸症候群は20代、30代の若年層に多く、患者数はわが国の成人の1割以上、約1200万人に上るともいわれるほどだ。また、大腸がんに至っては男性のがん死の第3位、女性では同じく第1位である。そして若い世代を中心に潰瘍性大腸炎と同様、原因不明の炎症性の難病である「クローン病」が急増しているとの指摘がある。

松生恒夫(まついけ・つねお)1955年、東京都生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、東京都立川市に松生クリニックを開業。大腸内視鏡検査や炎症性腸疾患などが専門。「腸の名医が警告する自己流診断の落とし穴」(双葉新書)「腸育をはじめよう!」(講談社)「長生きしたけりゃ腸は冷やすな」(主婦の友社)ほか著書多数。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20140407502.html

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