アルコール依存症は本人の健康だけでなく、家族、社会にも悪影響を及ぼす。依存症に陥っているかどうかの手がかりになる、男女別のチェック方法を紹介する。
1.アルコール依存症とは
アルコール依存症は、飲酒をコントロールできなくなる病気です。“大酒飲み”や“意志薄弱者”に起きると思われがちですが、実は飲酒量が少なくても、高齢者や女性ではアルコール依存症に陥ることがあります。最近は、女性や高齢者の患者さんが増え、全体の半分近くになっています。
WHO(世界保健機構)では、アルコールは60以上の病気やけがの原因になると報告しています。脂肪肝や肝硬変といった肝機能障害をはじめ、高血圧や膵炎[すいえん]、食道がんをはじめとするがん、不整脈・心不全などの心臓病も多く見られます。さらに、アルコールが脳の神経細胞などを壊すため脳が萎縮して、記憶障害など脳の機能障害が生じる場合があります。
2.アルコール依存症の症状
アルコール依存症の中心的な症状として、飲む時間、飲む状況、飲む量の3つのコントロールをできなくなることがあげられます。長時間飲み続ける、仕事中でも飲んでしまう、大量に飲むなどの飲み方をするようになり、その結果、体内に常にアルコールがある状態を維持しようとして連続飲酒をするようになります。また、中枢神経や脳の神経細胞が常にアルコールに触れている状態になり、脳の神経細胞が変化して神経順応という状態になります。そうなると、アルコールがある状態を正常と判断するようになり、アルコールが体から抜けたときに、「手や指が震える」「異常に汗をかく(特に寝汗)」「激しい吐き気・おう吐」「下痢」「睡眠障害」などの離脱症状が現れます。さらに重症化すると、幻覚症状や意識障害、てんかんの発作を起こすこともあります。
3.家族や社会への影響
アルコール依存症の問題は、本人の健康問題だけにとどまらず、家族や周りの人を巻き込み、さらに広く社会にまで影響を及ぼします。家庭内暴力や虐待のほか、事件、事故、飲酒運転も問題です。また、自分の置かれた状況や健康の問題を苦にした自殺がよく見られます。医療費や労働力の損失、事件や事故による損失などの、社会の経済的な損失にもつながっています。
アルコール依存症を起こしても、専門医療機関で治療を受ければ、回復が望めます。自分や家族のアルコール依存症が疑われる場合は、スクリーニングテストなどを活用して早めに気付き、対処していくことが大切です。
NHK「きょうの健康」2014年3月17日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140317-h-001.html