県道路交通法施行細則の改正により4月1日から、県内でも2人乗りのタンデム自転車の一般道路の走行が認められる。視覚障害者や高齢者でも風を切ってサイクリングを楽しめるのが魅力だ。走行が認められるのは全国で8番目となる。(藤本宏)
タンデム自転車は、サドルとペダルが前後に2人分装着された自転車。長さは1・9メートルを超え、道交法の定める普通自転車にはあたらないため、自転車の歩道通行を許可する標識がある道路でも、車道の左側を走らなければならない。
新潟市サイクリング協会の涌井秀行会長によると、欧州では長距離旅行用などで人気があり、国内でも自動車が普及するまでは、自転車店が顧客の自転車を納品する際、行きで顧客の自転車をこいだ店員を帰りに乗せるなど、広く実用されていた。
自動車の普及が進むと、一般道路の2人乗りが禁止され、条例などで特別に許可された観光地などに利用は限られた。だが、ハンドル操作の必要がない後部席ならば、視覚障害者が乗っても安全なため、各地の視覚障害者団体や自転車愛好家などが見直しを求め、2008年頃から長野、兵庫、山形県などで一般道での利用が認められるようになったという。
本県では09年、県議会2月定例会の一般質問でタンデム自転車の将来的な利用について質問が出たが、当時の県警本部長は「車体が長く、小回りがきかず、スピードも相当出る」として難色を示した。このため、同協会や県視覚障害者福祉協会などが試乗会を開くなどして理解を求めてきた。
昨年末に視覚障害者団体などから県警に対し、改めて改正の要望があり、県警は、先行する県で大きな事故が起きていないことなどから、見直しについて検討していた。
タンデム自転車は自転車店で注文すれば誰でも買えるが、車体が大きく構造が複雑なため、値段は自転車2台分程度になる。新潟市中央区の自転車店「カミフルサイクルステーション」が展示販売している米国社製は約7万円。スポーツ用はさらに高価という。
■誰でも走行楽しめる
タンデム自転車に乗る場合の注意事項について、珍しい自転車の収集家でタンデム自転車を2台所有する涌井会長に聞いた。
前後のペダルはチェーンでつながっており、一緒にこぎ出し、休む時も同時に止める必要がある。こぎ方が合わないとペダルが足から外れ、特に視覚障害者は目でペダルの位置を確認できないため危険になる。
ハンドルを握る前席の人が「1、2でスタートします」、「もうすぐ左に曲がります」などと声をかけながら走るのが大切だ。テニスのダブルスのように、始めはこまめにコミュニケーションをとり、慣れてきたら次第に声に出さなくても連携が取れるようになる。
タンデム自転車はパラリンピックの正式競技でもあり、本格的なスポーツ車もあるが、後部席には障害者や高齢者、子どもまで、誰でも乗れる楽しい乗り物。これまでサイクリングができなかった人たちにも、風を切って走る爽快感を味わってもらいたい。