ここ数年、冬になるとスーパーのヨーグルトコーナーから商品が消える騒ぎとなっている。沸騰し続けるブームの裏側に迫った。
「機能性ヨーグルト」と呼ばれるヨーグルトが、いま爆発的に売れていることをご存じだろうか。
スーパーでは棚から商品が消え、「どこに行けば買えるのか」とメーカーには問い合わせが続々。コンビニでは多くの店舗で売り場を拡張し、栄養ドリンクの隣にドリンクタイプのヨーグルトを陳列するドラッグストアも増えている。
これまでもヨーグルトは、整腸作用とそれに伴うダイエット効果をテレビが取り上げたことがきっかけで、過去に2回ブームがあったと雪印メグミルク研究開発部課長の村上達也氏は言う。
同じようにテレビをきっかけとしてブームとなった食品は数多くあるが、ほとんどはブームが終息すると急激に売り上げが落ち込んだ。
「しかしヨーグルトは特異な動きを見せ、1回目のブームで売り上げが跳ね上がった後も落ち込まず、上がったまま停滞して横ばいに推移したのです。2回目のブームでも同じでした。ほかの食品がブームで一気に上がって急速に下降する逆V字を描くのに対し、ヨーグルトは2回のブームを挟みながら、一度も下降することなく階段状に上がっていきました」
これはブームに乗って食べ始めた人がそのまま常食するようになったことの表れであり、ヨーグルトの健康効果と価値が消費者に浸透したことの証明と言っていいだろう。
そして現在、ヨーグルト市場は3回目のブームに沸いている。きっかけは、機能性ヨーグルトと呼ばれる商品群の誕生であった。明治「明治ヨーグルトR-1」「明治プロビオヨーグルトLG21」、雪印メグミルク「恵 megumi 長くとどまるガセリ菌ヨーグルト」「恵 megumi 生きて届けるビフィズス菌ヨーグルト」、森永乳業「ラクトフェリンヨーグルト」「森永ビヒダスBB536」などの大手3社の商品をはじめとして、ダノン「ダノンビオ」、グリコ乳業「朝食プロバイオティクスヨーグルトBifix」、タカナシ乳業「おなかへGG!」、伊藤園とチチヤスの共同開発「朝のYooフェカリス菌1000」などなど、いまスーパーの陳列棚は百花繚乱の様相を呈している。
機能性ヨーグルトとは一口に言えば、特別な機能を持つ乳酸菌やたんぱく質を加えたものである。たとえば明治の「R-1」は免疫力を高めてインフルエンザを予防する乳酸菌1073R-1、「LG21」にはピロリ菌を抑制するLG21乳酸菌、雪印メグミルク「恵 megumi」には小腸に長くとどまりメタボを改善する乳酸菌のガセリ菌SP株がそれぞれ使用されている。森永乳業「ラクトフェリンヨーグルト」に入っている母乳などに含まれるたんぱく質ラクトフェリンは、ノロウイルス感染を予防する効果が認められており、「ビヒダスBB536」のビフィズス菌BB536は花粉症の症状を緩和させる。
これらの商品が2010年頃から次々と発売され、テレビで「インフルエンザ予防になる」「ノロにも花粉症にも効く」と紹介されると、一気に火がついた。10年までの数年間ずっと横ばいだった市場全体の売り上げが、11年度は前年比107%、12年度は前年比109%(いずれも明治推定)と成長。大手3社とも、13年度も同程度の伸びと推測している。過去2回のヨーグルトブームが、成長の後、下降はしなかったもののすぐに停滞したのに対し、機能性ヨーグルトが牽引する今回のブームは、3年目を迎えたいまでも成長し続けているのである。
機能性ヨーグルトだけに絞ると、さらに驚異的な数字が並ぶ。
明治は12年度のヨーグルト売り上げ約1414億円(前年比約123%)のうち、機能性ヨーグルトにあたるプロバイオティクスヨーグルト群は570億円(前年比約153%)、13年度は671億円を見込む。
雪印メグミルクの「恵 megumi」ブランドは、具体的な売り上げは非公開だが、13年4~12月で前年比120%を達成。
森永乳業の「ビヒダス」ブランドは12年度に約300億円と、前年比118%の伸びを示し、13年度も同程度伸長の見込み。「ラクトフェリンヨーグルト」に至っては、13年度の売り上げはなんと前年比約300%を見込む。ノロウイルスが世間を騒がせ始めた昨年12月には、テレビや新聞がこぞってラクトフェリンヨーグルトを取り上げ、9日にNHKが情報番組で紹介すると、その日から1週間の売り上げが前年同期比770%と、耳を疑う数字を叩き出したという。
http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/healthcare/president_12085.html