小さな子どもが激しく泣きだしたら腹痛を疑うことも大切だ。便秘症が原因になっていることが多いが、中には、外科的な治療が必要で、早期の対処が大切な病気が隠れている。
１．腹痛が起きたとき
子どもの腹痛の原因には、便秘、ノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎、かぜ、ストレスなどさまざまなものがあります。適切に対処すればそれほど心配しなくてよいことが多いのですが、なかには、急性虫垂炎、腸重積症、そ径ヘルニア嵌頓［かんとん］など、外科的な治療が必要になる場合もあります。小さな子どもは、自分で“おなかが痛い”と訴えることができないため、周りの大人が子どもの発するサインを見逃さずに、早く気づくことが大切です。判断が難しい場合は、かかりつけ医に相談してください。夜間や休日は、全国共通の小児救急電話相談「＃８０００番」に電話して相談するとよいでしょう。
２．自宅での対処
まず、ぐったりしているのか元気なのかチェックし、ぐったりして呼びかけても反応しない場合は、すぐにかかりつけ医か、夜間・休日なら救急外来を受診してください。元気があっても、激しく泣いてばかりで理由がわからないときは、おなか（おへその周り）を触って嫌がるかどうかを確認します。腹痛があると思われるときは便秘・発熱・下痢がないかを確認します。便秘が疑われる場合は自宅で様子を見ましょう。発熱や下痢が伴っていても、機嫌がそれほど悪くなければ、脱水を起こさないよう経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と塩分を補いながら、自宅で様子を見てかまいません。おう吐した場合は、どんなものを吐いているか観察し、食べたもの以外に緑色や赤色などの色のついた液体が混じっている場合や、何度も吐くなど症状が激しい場合は受診します。
３．注意したい腹痛
大腸の端にある虫垂（盲腸の先端にある長さ６～７ｃｍほどの突起）の内腔が閉塞して細菌感染が起きると、急性虫垂炎（いわゆる盲腸炎）になります。５～６歳以上の子どもに発症することが多く男女差はありません。症状は、最初はみぞおちの辺りの痛みから始まり、吐き気を催すことも多く見られます。そのうちに徐々に右下腹部がずきずきと痛みだし、やがておう吐や発熱が起こります。
腸重積症は、小腸の終わりの部分が大腸に潜り込み、重なってしまう病気です。３か月から２歳ごろまでの男児に多く見られ、かぜをひいているときによく起こります。症状は「突然のおう吐」「機嫌が悪くなる」「激しく泣く」などで、「２～３分ごとに機嫌がよくなったり悪くなったりし、腹痛を繰り返す」ことが特徴です。時間とともに悪化し、イチゴジャムのような粘血便が出ることもあります。命に関わることもあるため、早く気付いて対処することが大切です。
そ径ヘルニア嵌頓［かんとん］では、そ径ヘルニア（腹膜が袋状に飛び出て、その中に腸や卵巣などの臓器が飛び出る状態）が元に戻らなくなり、袋の入り口で締めつけられることで痛みなどの症状が出ます。脚の付け根の膨らんでいるところが硬く腫れ、非常に強い痛みがあるため、触ると嫌がって激しく泣きます。不機嫌になるだけでなく、おう吐したり、顔色が悪くなったりすることもあります。
４．治療
急性虫垂炎では以前は手術が主流でしたが、現在は発見が早ければ抗菌薬による治療も可能です。手術をしなければ、３～４日の入院で帰宅できます。
腸重積症は、発見が早ければ、肛門から腸に造影剤を流し込んで潜り込んでいる腸を押し戻す高圧浣腸だけで治る場合があります。この方法で治れば１日で退院できますが、治らない場合は手術を行います。
そ径ヘルニア嵌頓［かんとん］は、発症からあまり時間がたっていない場合は、医師が袋にはまり込んだ腸などをおなかの中に押し戻します。これで無事に戻れば数時間後には帰宅できます。押し戻せない場合は、下腹部を小さく切開し袋の入り口となっている腹膜を縛って閉じる緊急手術をします。臓器を切除しなければ、入院日数は２～３日です。緊急手術をせずに済んだ場合も、いずれそ径ヘルニアの手術が必要になります。
NHK「きょうの健康」2014年2月19日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140219-h-001.html
