おそらく誰もが、一度は食べたことがあるであろうガム。口さみしいときや集中したいとき、リフレッシュしたいときなど、日常の様々なシーンで活躍してくれます。近年では特定保健用食品(トクホ)のガムも出るなど、色々なバリエーションのガムが見られますが、これまでに中身を気にしたことはありますか? 今回はガムの中身についてお話しましょう。
○ガムはガムベースから作られている?
まずは食品表示ラベルを見てみましょう。どれどれ…書いてあります、確かに書いてあります「ガムベース」。なるほど、ガムベース! ガムの材料ですから当たり前……って、いやいやガムベースって何なのでしょう?
物知りな人はご存じかもしれませんが、ガムベースとはガムの木(サポジラ)から取れるチクルからできています。サポジラは熱帯地方に分布する植物で、この樹皮からガムの材料であるチクルを得ることができます。ただ、非常に高価なため、チクル100%のガムベースでガムを作ることは、採算面からするとなかなか難しいです。
では、実際のガムベースは何でできているのでしょう。これはメーカーによってまちまちですが、使われている材料は概ね同じです。まず、チクルは10~25%くらいは含まれています。その他に「ポリイソブチレン」「部分水素添加ロジンエステルガム」「脂肪酸モノグリセライド」「炭酸カルシウム」「酢酸ビニル樹脂」などと、何やら聞き慣れないものが含まれています。
○ガムベースは接着剤と同成分でできている
このうち、例えばポリイソブチレンと酢酸ビニル樹脂は接着剤の成分として使われています。この事実を聞くと、「なんて不気味な! 」と思う人もいるかと思いますが、当然飲んでも食べても完全に無害です。これらの成分を少し詳しくご紹介しましょう。
まず、ポリイソブチレンはイソブテンの重合した物、つまりは分子同士が連なったポリマーであり、不純物を含まないものであれば無害無毒です。安全性と高い接着性を兼ね備えているため、接着剤や害虫トラップの粘着面などに用いられています。
次に酢酸ビニル樹脂は木工用接着剤の他、二重まぶたをメイクするときに使われる化粧品の主成分……というかそのものです。肌に塗布する化粧品は、薬事法に基づく化粧品基準をクリアしているため、酢酸ビニル樹脂の安全性もご理解いただけるかと思います。
そして部分水素添加ロジンエステルガム。名前はおっかないですが、実はただの加工した松ヤニ成分です。松ヤニの成分に水素をうまく添加し分子構造を変えることで、チクルのような素材に変えることができるというわけです。こちらも接着剤にも使われています。
あとは卵の殻の成分である炭酸カルシウムでかたさを調節すれば、ガムベースのできあがりです。こうして見るとおわかりかと思いますが、ガムは接着剤で用いられている成分を多く含んでいるんですね。
ちなみに今回ご紹介した成分は油溶性なので、油に触れると分子の連なりが切れて分解されて溶けてしまいます。チョコととガムを一緒に食べると、ガムが溶けてしまった……という経験をされた方もいらっしゃるかもしれませんが、これがその理由です。
成分の名前だけ見て、「不気味」「気持ち悪い」と思う前に、「どうして使われているのか? 」をしっかり考えることが、添加物と正しく付き合うコツといえるのではないでしょうか。
○筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。
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