不妊治療を行っている方は自分でいろいろと勉強をされているので、この違いはわかると思うのですが、まだ治療を考えられていない人や最近治療を始められた方には言葉の意味がわかりにくいということをよく聞きます。そこで、今回はその違いを簡単に説明させて頂きます。
■人工授精とは?
人工授精とは採取した精液を、カテーテルという細い管を使って子宮に直接注入するもので、精子を卵子が受精しやすいところに入れる治療法です。この治療法を選択される場合は下記のケースです。
1) 子宮頚管の中の粘液分泌が正常ではない場合
2) タイミング療法やHMG-HCG療法を行ってきてうまくいかない場合
3) 男性の精子が少ない場合(4000万程度まで)・無精子の場合(AID)
4) 性交障害(勃起障害・女性器異常など)の場合
人工授精には2種類あります。
□AIH(配偶者間人工授精 Artificial Insemination of Husband)
夫の精子を使って行う人工授精です。
□AID(非配偶者間人工授精 Artificial Insemination of Donor)
夫が無精子症の場合、この治療法を選択することがあります。
最近の人工授精は精子を遠心分離で選別して、優良な精子だけを注入するやり方が一般的です。人工授精の妊娠率は施設によってばらつきがありますが、約10~20%程度です。
人工授精で妊娠する場合、4回までで妊娠する率は90%を超えるので一つの目安になると思います。通常、クリニックでは約6~8回程度行って、うまくいかない場合は次の段階である体外受精に進む場合が多いです。
■体外受精とは?
体外受精とは、女性の卵巣から卵子を体外に取り出して、男性の精子と受精させ、数日の培養後、細胞分裂(分割)が始まれば、女性の体内(主に子宮内)に戻すと言う治療法です。一般的に試験管ベビーと言われたのがこの方法です。
体外受精は体内で受精が難しいと考えられる場合に行う方法で、文字通り「体外で」受精を行う方法を指します。現在最も一般的であるのはIVF-ET(体外受精-胚移植)ですが、GIFT(配偶子卵管内移植)、顕微受精(ICSI;卵細胞質内精子注入法、ほか)あるいは凍結胚移植なども含めて体外受精と呼称されているようです。
体外受精の適応については以下のようなケースが相当します。
1)両方の卵管が閉塞している場合
2)乏精子症や精子無力症など精子に原因がある場合
3)抗精子抗体のような免疫系に原因がある場合
4)AIHを何度も施行しても妊娠しない
5)子宮内膜症があって妊娠しない
6)高齢で妊娠のチャンスが少ししかない場合
体外受精は8つのステップで進んでいきます。
排卵誘発→採卵→精子採集・調整→媒精→培養→胚移植→黄体補充→妊娠判定
体外受精の場合、妊娠率は20~40%と施設によって大きく違います。その率の違いはクリニックの品質管理や患者さんの年齢層などさまざまな要因やデータの取り方で左右するので、一概にどこが良いとは言えませんが、体外受精を得意としているクリニックは症例数が多いのでそれが一つの指標になると思います。
体外受精の場合、問題となるのが費用の問題です。これも大学病院などでは10万円台から、高いところでは70万円ぐらいかかるところもあります。費用の差はやはり、コストに比例しますので、都市部の一等地で多くのスタッフで治療を行っているところは値段が高くなる傾向にあります。
文・池上 文尋(All About 不妊症)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140304-00000004-nallabout-hlth