会社や自治体の健診で保健指導の対象となった人が指導を受けるか、無視してそのままの生活習慣を続けるかは大きな分かれ目となる。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)からの脱出で有効とされるのが筋力トレーニングだ。予防医療や医療費削減の観点からも推奨されている。筋トレでメタボ状態を脱したケースを交え、その効果を紹介する。(大家俊夫)
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予備軍宣告が契機
東京都中野区の主婦、山田孝子さん(67)は一昨年、送られてきた区の健診結果に驚いた。メタボ予備軍-。メタボの女性の腹囲基準90センチを上回り、中性脂肪も基準値を超えていた。「健診の診断結果の封筒にスポーツジムの資料が複数入っていた。重い腰を上げてジムに通って運動することにしました」
山田さんは筋トレを週に2、3回、9カ月続けた。その結果、昨秋の区の健診では体重は前回比で6キロ減、腹囲も6センチ減。中性脂肪値も正常値になり、「異常なし」となった。
山田さんは筋肉が付いたためか、持病の膝間節痛が改善するという副産物も。整形外科に通うことはなくなり、予防医療の実践や医療費の削減という点で大きな成果を上げた。
メタボと判定された神戸市の主婦(69)は平成19年9月に60キロあった体重がジムで筋トレを始めたことで、21年10月には47キロまで減った。メタボは改善され、「洋服のサイズが15号から9号になった。五十肩の痛みからも解放されました」という。
共同研究で結果
筋トレとメタボの関係について研究も行われている。女性専用のフィットネスジム「カーブス」(東京都港区)は19年から20年にかけて、国立健康・栄養研究所と共同で、40~60代の女性を対象に、筋トレと有酸素運動を組み合わせたサーキットトレーニングをした群としない群に分けてその差を調べた。トレーニング群は23人が参加し、16週間運動をした。平均91センチあった腹囲が同89・8センチと同1・2センチ減とメタボ基準を下回った。一方、18人が参加したトレーニングしない群では腹囲の平均が91・6センチだったのが同91・8センチと微増した。
研究の結果では、トレーニング群は血圧と血糖値、動脈硬化度で低下傾向になったのに対し、トレーニングしない群ではそれらの数値で有意な改善は見られなかった。
メタボや生活習慣病の改善には食事療法と運動療法が両輪。同研究所健康増進研究部の宮地元彦部長は「食事療法単独では体重は落ちるかもしれないが、筋肉量の減少によって基礎代謝が減り、リバウンドしやすい体をつくることになりかねない」と指摘し、筋トレとの併用を勧める。
宮地部長は「筋トレは予防医療の一歩で、多くの人が取り組めば医療費削減にもつながる。高血圧などの人は医師に相談して、無理のない運動から始めるのがいいだろう」と話している。
実年齢よりも若く見られる
筋トレの難点は継続が難しいことだ。自治体などで運動指導をしている「日本健康運動研究所」(東京都港区)の菅野●所長は「筋トレをすれば、多くの人は実年齢よりも若く見られるようになる。体が元気なら旅行や趣味といった好きなことが先々も続けられることをイメージするのが良い」と助言する。
そのうえで、「ジムに行ってしっかり運動するのも良し、自宅で少しの時間にスクワット系やツイスト系の運動をするのも良い。自分に合ったパターンを見つけることが大切」としている。
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