環境省は3日、地球温暖化による国内での災害や健康被害などを軽減するための「適応計画」策定に向け、検討材料となる被害予測の中間報告案を公表した。海面上昇が進むと、100年後には高潮による浸水被害が10億円以上の地域が東京湾など5カ所に及ぶなど、深刻な内容だ。
適応計画は、今世紀末に日本の年平均気温が2.5~3.5度上昇すると想定。被害予測を検討するため、食料(農水産業など)▽水資源▽自然災害など7分野で各省庁・研究機関が公表済みの100以上の分析結果を集めた。
農業では、コメの総生産量が一定程度増加するものの、高温による品質低下のリスクが増す。自然災害分野では、非常に厳しい温室効果ガス削減を実施しても大雨による洪水被害が増加。浸水域は最大で1000~1200平方キロに達し、特に関東、甲信越、北陸での増加が懸念される。また、熱中症による死亡リスクは、今世紀末には約2.1~3.7倍に上るとした。
温暖化対策をめぐっては、今後温室効果ガス排出削減が進んだとしても社会や生態系への影響が避けられない可能性が高いとして、被害対策に力を入れる国が増えている。日本も適応計画を来年夏に閣議決定することを目指している。
同省は今月中に中間報告をまとめた上で、広く意見を募り、来年2月に取りまとめる最終報告に盛り込む。今月末に横浜市で公表される国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第5次報告書の内容も反映させる。【大場あい】
◇今世紀末までに予測される主な影響◇
・コメの総生産量は少し増加する一方、品質低下のリスクが上昇
・リンゴ、ウンシュウミカンの栽培適地が北上
・洪水氾濫面積が1000~1200平方キロに
・梅雨後期の降雨量、強い雨の頻度が増加
・がけ崩れなど斜面崩壊の発生確率が増加
・海面上昇により砂浜が最大約47%喪失
・台風襲来の可能性は少なくなるが、強度は高まる
・熱中症による死亡リスクが約2.1~3.7倍に
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