■勉強が楽しいとき親が褒めては逆効果
東大生は親から「勉強しなさい」とあまり言われないそうです。理由は簡単で、親に言われなくても勉強していたり、効率よく勉強し成績をあげている子が多いからでしょう。
しかし、彼らが親に強いられなくても勉強を続けることができたのはなぜでしょうか。
やる気を起こさせる基本的な方法論として、「褒める」と「叱る」があります。「勉強しなさい」というのも「叱る」部類に入ると思いますが、「褒める」と「叱る」では、どちらが有効でしょうか。
マウスに迷路を学習させる有名な実験があります。「ゴールに餌を置いておく(=褒める)」、「道筋を間違えたら電気ショックを与える(=叱る)」、「正しければ餌、間違えたら罰を与える(=褒めたり、叱ったり)」という3つのパターンで実験を行うと、効率よく学習できるのは、「ゴールに餌を置いておく」だけなのです。
「餌と罰の両方」もダメで、罰が待っていると学習中のマウスは萎縮してその場から動かなくなってしまう。
このようにマウスの実験では「褒める」だけが効果的という結果がキレイに出ます。では、人間ではどうでしょう。
子供のやる気にとっても、「褒める」ことは確かに大切です。
たとえば小学校低学年の九九を覚えるような段階では、「親が褒めてくれる」から勉強を頑張り、結果も出ます。これが高学年になると、心理的には発達し自我が芽生え、将来の夢もできる。「医者になるため」「○○中学に合格するため」「○○クンに負けたくない」などと、目標のために努力するようになるのです。
親は、褒めてやる気にさせるステージから、興味や目標のために自分で努力するステージに、スムーズに移行させることが大切です。
注意していただきたいことは、褒めることが逆効果になるケースさえあることです。たとえば、お絵かきが大好きで自発的に描いている子供に、「あら~お絵かき上手ね」と声をかける大人は少なくありませんが、実はこれって最悪の声かけです。
周囲から何度も褒められて快い思いをするうちに、絵を描くことが大好きだったはずが、褒められたくて描いているのだと認識してしまう。これを心理学用語で、「認知的不協和」といいます。すると絵を描くことへの興味を急速に失ってしまう。子供が積極的に取り組んでいることに関しては褒めてはいけないのです。
これは、勉強でも同じです。東大生の親には、「勉強しなさい」と言わないだけでなく、取り立てて成績を褒めない人も多いようですが、そのことが興味を長続きさせたのです。
では、自発的に頑張っている子供にはどう声かけをすればいいのか。本当は放っておくのが一番いいのですが、何か声をかけてやりたい衝動を抑えるのは難しいものです。あえて声をかけるとしたら、成績が上がったことを子供と一緒に「嬉しいね」と喜ぶことくらいでしょうか。まちがっても「がんばって勉強したからだね」と褒めてはいけません。
私も、大学の研究室の学生には、「徹夜して頑張った甲斐(かい)があったな」などと褒めることは決してありません。「おもしろいデータだ」などと実験結果そのものへの感想を楽しげに言うだけです。
http://news.goo.ne.jp/article/president/life/president_12016.html